世界をスケッチ旅行してまわりたい絵描きの卵の備忘録と雑記
魔法の絨毯 -美術館めぐりとスケッチ旅行-
ボーヒン湖にて(続々々)
渓流に沿って、来たときとは別のルートで山道を下りる。途中、ロッジの庭先に道標があったので、確かめようとすると、パリまで何キロ、プラハまで何キロ、東京まで何キロ、などなどと記してある。
役に立たないけど、微笑ましい。
歩きに歩いて、ようやくボーヒン湖の端に着いた。ボーヒン湖は黄金のマスのように横に細長く、こっちの端から、あっちの、町のあるほうの端へは、観光船が走っている。
歩き疲れて足が重い。空を仰げば、はらはらと小糠雨。さすがの相棒も、ボーヒン湖一周は諦めたらしい。船で対岸まで戻って、買い出しを……という暗黙の合意になって、船着場のベンチに腰掛ける。
そこへ、4、5歳くらいの小さな女の子が、「ハロー!」とやって来た。金髪の長い髪に、遠視用の眼鏡。自分用の小さなピンクのリュックを背負って、船着場の柵から身を乗り出して湖を覗き込み、
「魚がたくさん泳いでるわ!」
女の子はまるで、“イーヨー(=知的障害者の意)”のように天真爛漫で、何にでも興味を示す。船が蹴立てる白い波にも、湖の水盤に広がる波紋にも。そして、人見知りせずにこちらに近寄ってくる。
「あっちにも、これと同じ船が走ってるわ!」
ドイツ語を喋っているので、相棒が、ドイツ語で話しかけてみた。
「あなたはなんて美しいんでしょう!」
すると女の子は、一瞬固まった後、屈託なく、
「そうよ、私はとっても美しいの!」と顔いっぱいにこぼれるような喜びの笑みを輝かせた。
船が着き、湖畔に降りて、岸辺のベンチに腰を下ろす。相棒はベンチの存在を、「座って、ここからしばし景色をご堪能あれ」のメッセージだと受け取っている。
To be continued...
画像は、ボーデン湖畔の村落。
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