マイナス14歳の寿命

 
 高校生のとき、最愛の友人が事故で死んだ。どうやって立ち直ったのか、憶えていない。
 いつも、これから生きていかなければならない、死に等しい時間のことを考えていた。過去の夢に支えられ、未来の夢に力を借りて、現在の苦しみをやり過ごそうとした。けれど、昨日の苦しみは今日に持ち越され、今日どれだけ苦しもうとも、明日にはまた同じ苦しみが待っていた。

 で、立ち直った経緯は省くけど、相棒ができて、私は一つだけ心に誓いを立てた。
 ……きっと彼より先に死のう。

 まずいことに、相棒と私には14歳の年齢差がある。だから私は、普通に生きたとしても、14年だけ寿命を縮めなければ、相棒と同じときに死ぬことができない。
 不摂生しようかとも思うのだが、私は酒も煙草もやらないし、今じゃ外的な対他関係もほとんどないので、ストレスだって特にない。過労もない。睡眠不足もない。貧血で低血圧だけれど病気ではない。痩せ気味だけれど栄養失調ではない。……で、困っている。

 運動不足だから、ヨガでも始めようかと思うけれど、こういうわけで、相棒が一緒にヨガをやらないなら、自分だけヨガなんて永久にやれそうもない。

 私の夢は残りの余生、あと20年くらいのあいだ、世界を旅しながら絵を観て、絵を描いて暮らすこと。そして、あまり痛みのない死に方で、相棒の腕のなかで死ぬこと。
 そのときに、なんだかんだ言っても、私の人生は幸せだったなあ、って思えること。

 画像は、スウェールツ「庭園の若い男女と少年」。
  ミヒール・スウェールツ(Michiel Sweerts, ca.1618-1664, Flemish)
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