夢の話:逃亡者(続)

 
 それでもやっぱり追いかけられた。いつも切迫しながら逃げていた。
 追われるのは大抵、私一人だった。みんなが一様に追われるときもあったけれど、そうした場合もいつの間にか、そのなかで私だけが運悪くターゲットとして狙われるのだった。なんで私ばっかり~い、と思っていた。

 夢のなかでは誰も助けにならない。両親すら助けてくれたことはない。ときどき、弟や学校の友達と一緒に逃げることもあったけれど、そういうときは大抵、彼らが私の足手まといになった。
 
 私はいつも逃げて、逃げて、逃げて、いよいよつかまる! と思ったときには大きく眼を見開く。死に物狂いで、できるだけ大きく眼を見開く。すると、眼が醒める夢を見る。実際に眼が醒めるときもある。
 だから、夢でつかまったことは、まだたった一度しかない。
 
 それで夢はリセットされる。も一度眠る前に、神さまにお祈りして念を押す。
「今度こそ、怖い夢を見せないでくださいね!」
 が、懲りずに同じような、追いかけられる夢を見るのだった。

 相棒ができた頃から、あまり追いかけられる夢を見なくなったように思う。現実に怖い経験は、相棒に会ってからのほうが多いのに、不思議な気がする。 
 今でもときどき、追いかけられる夢を見る。追いかけてくるのは大抵は人間。つかまりそうになると、相変わらず眼を大きく見開いて、眼を醒ます夢を見てリセットする。
 でも、もうあまり怖くはなくなった。それに、あまり一人では逃げなくなった。なぜだか坊がいたり、相棒がいたりする。

 To be continued...

 画像は、マネ「ロシュフォールからの脱出」。
  エドゥアール・マネ(Edouard Manet, 1832-1883, French)

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