世界をスケッチ旅行してまわりたい絵描きの卵の備忘録と雑記
魔法の絨毯 -美術館めぐりとスケッチ旅行-
ギリシャ神話あれこれ:アトレウス兄弟の復讐合戦(続々)

ヘラクレスの後裔がアテナイに逃れると、エウリュステウス王は引き渡しを迫り、それを拒んだアテナイとの戦争となる。王は敗れ、彼の息子たちはことごとく討ち取られる。王自身も、ヘラクレスの子ヒュロスに殺されて斬首され、ヘラクレスの母アルクメネによって両眼を抉り出されたという。
さて、自業自得で族滅されたエウリュステウス王のせいで、突然、ミュケナイの王位は空位となる。そこでミュケナイの人々がデルポイの神託を仰いだところ、「ペロプスの子を王に迎えよ」……
俄然、兄アトレウスと弟テュエステスは王位をめぐって対立することに。
弟テュエステスは奸計をめぐらす。かねてから姦通していた兄妻アエロペに、兄アトレウスが隠し持っていた金羊毛を盗み出させると、何食わぬ顔で主張する。
「ミュケナイの王は、黄金の羊の毛皮を持つほどの有徳の者こそがふさわしい」
兄アトレウスは、ふッふッふ、だが俺はその金羊毛を持っているのさ、と内心ほくほくしながら、弟に同意する。が、審判の場に金羊毛を提出できたのは、兄からそれをちょろまかした弟のほう。
こうして、一旦は弟テュエステスがミュケナイ王となる。が、このときなぜか、テュエステスの欺瞞を嫌忌した大神ゼウスが、兄アトレウスに入れ知恵する。
「太陽が逆行し、西から昇り東に沈むなら、王位決定もまた逆となる」
ふふん、そんなことあるわけないさ、と弟は兄の提案をすんなり受け入れるのだが……
翌日、ゼウス神の計らいで、太陽は西から昇り東へと沈んでいく。ミュケナイの人々は、弟テュエステスの不正と神々の立腹を知り、彼を追放、王位を兄アトレウスへと移す。
To be continued...
画像は、ミオーラ「神託」。
カミッロ・ミオーラ(Camillo Miola, i840-1919, Italian)
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ギリシャ神話あれこれ:アトレウス兄弟の復讐合戦(続)

あるとき、兄アトレウスは奴隷市で、美しく品の良い女奴隷を一人買う。彼女はアエロペといい、実はクレタの王カトレウスの娘なのだが、自身の子に殺されるとの神託を受けた王が、奴隷として異国に売りとばしてしまったのだった。
さて、アトレウスはアエロペを侍妾にしていたが、やがて彼女の高貴な出生を知るに及んで、正妻として迎えることにする。
だが一方、おそらく奴隷の身分だった頃から、アエロペは、アトレウスの弟テュエステスとも姦通していた。アトレウスの妻となってからも、義弟テュエステスとの情交は続く。
ところで兄アトレウスは、ミデアの繁栄を神に感謝し、毎年、新しく生まれた仔羊のうち最上のものを狩猟神アルテミスに捧げることを誓っていた。その志を試そうとしたのだろう、アルテミス神は黄金の仔羊を生まれさせる。
奇跡のようにポッコリ生まれた金ぴかの仔羊! にわかにアトレウスは仔羊が惜しくなり、それをこっそりと絞め殺して、金の毛皮を箱のなかに隠しておいた。
……神々への誓約を反故にしたのだから、普通なら、神の怒りによる嵐やら飢饉やらの直截的な制裁が次に来るのだが、そうなっていない(?)のがちょっとよく分からない。が結局、この金羊毛は、一族の以降の不貞やら奸計やら復讐やらを引き起こすメイン・アイテムとなっているので、怒れる神もそれ以上の手出しをしなかったのかも知れない。
その頃ミュケナイでは、ステネロス王の亡き後、その息子エウリュステウスが王位を継いでいた。
エウリュステウスは、かの英雄ヘラクレスに12の難業を課した王で、臆病で尻弱なくせに権力には執着するという卑劣な輩。ヘラクレスの死後、その後裔がミュケナイ王位を狙うのではないかと怖れた王は、彼らを殲滅せんものと追跡を始める。
To be continued...
画像は、ベッツィ「テュエステスとアエロペ」。
ジョバンニ・フランチェスコ・ベッツィ
(Giovanni Francesco Bezzi, 1549-1571, Italian)
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ギリシャ神話あれこれ:アトレウス兄弟の復讐合戦

ペロプスの直系であるアトレウスの一族は、ミュケナイの王位継承をめぐって血で血を洗う呪われた血統。呪詛と罪業が連綿と続く。全部たどるのは一苦労。
古代ギリシャ人て、忌まわしく呪わしい話が好きで困る。この感性、真似できん。
神々に愛されたペロプスだが、妻ヒッポダメイアを得る際に、逃れられない宿命から、ミュルティロスという恋敵を殺害する。死に際してミュルティロスは、ペロプスの一族に災いあれ! と呪う。この呪いは、ペロプスの子の代以降に次々と成就する。
ペロプスには、正妻ヒッポダメイアの他に、ニンフに生ませたクリュシッポスという美しい息子があった。ペロプスは庶子で末弟のクリュシッポスを溺愛していて、ヒッポダメイアは常々このクリュシッポスを嫉妬し、彼に王位を奪われるのではないかと怖れてもいた。
この頃、テバイの王ライオスがペロプスのもとに亡命していたのだが、彼は、まだ少年だったクリュシッポスに激しい恋情を抱くようになる。何度も求愛するが拒絶され、とうとう実力行使、クリュシッポスを誘拐して強姦する。
これを恥じたクリュシッポスは、ライオス王を呪って自殺してしまう。
が、別伝では、先のヒッポダメイアの事情から、彼女が、息子であるアトレウスとテュエステス兄弟に、誘拐のドサクサにまぎれて、クリュシッポスを殺させた、という。つまり、父ペロプスに命じられて、誘拐されたクリュシッポスを連れ戻しに出た二兄弟が、母ヒッポダメイアに教唆されて、クリュシッポスを殺害したわけ。
彼らはこれをライオス王の犯行と見せかけたが、それはちょっと虫がよすぎる。凶行はペロプスの知るところとなり、ヒッポダメイアと、アトレウスとテュエステス兄弟は、ペロプスに呪われながらピサを追われる。
二兄弟は妹ニキッペが嫁いだミュケナイの王ステネロスを頼る。ステネロス王は二兄弟を迎え、王国のうちミデアを委ねて統治させた。(ヒッポダメイアはミュケナイで自殺したという)
二兄弟が統治したミデアは富み栄えるのだが……
To be continued...
画像は、テューク「真昼の陽盛り」。
ヘンリー・スコット・テューク(Henry Scott Tuke, 1858-1929, British)
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ギリシャ神話あれこれ:ペロプスの戦車競走(続々)

さて、勝利したペロプスは、ヒッポダメイアとミュルティロスを乗せ、そのまま故郷に向けて戦車を駆る。が、いざ勝利を得てしまうと、惜しくなるのが約束の報酬。
一方、ミュルティロスのほうは報酬を貰う気満々で、ペロプスがヒッポダメイアのために泉の水を探しに出た隙に、体をよこせ、とヒッポダメイアに襲いかかる。
ペロプスは、もはや邪魔になったミュルティロスを、ゲライストス岬を通り際、戦車から突き落とす。早速、オイノマオス王の呪いが成就したわけ。
もはやこれまで。海中へと没しながら、ミュルティロスもまたペロプスを呪う。お前の一族、子々孫々に災いあれ!
ミュルティロスは死して馭者座となったという。
ペロプスは、世界の果てを取り巻く極洋オケアノスまで戦車を駆り、鍛冶神ヘパイストスに殺人の罪を浄めてもらう。その後、ピサに戻り、周辺諸国を制圧。自身にちなんで王国の名をペロポネソスと改めた。
ペロプスは多くの子に恵まれたが、やはりミュルティロスの呪いが成就し、一族は骨肉相食む欺騙と姦淫と謀殺を繰り返す。
ミュルティロスの呪いによって死んだペロプスの庶子クリュシッポスが、自分を強姦したテバイの王ライオスの一族を呪ったことで、ライオスとオイディプス以降のテバイ王家にまで、悲劇が伝播する。
……この呪いの連鎖、ついていけない。
画像は、カゼロウスキー「戦車競走に勝利したペロプスとヒッポダメイア」。
アウグスト・テオドール・カゼロウスキー
(August Theodor Kaselowsky, 1810-1891, German)
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ギリシャ神話あれこれ:ペロプスの戦車競走(続)

オイノマオス王は軍神アレスを父に持つ。アレスの子というのは概ね野蛮で好戦的。王もまた血を喜ぶ性があって、求婚者らに追いついて槍で殺し、見せしめにその首を切り落として、王宮の門にずらりと並べて打ちつけていた。
王が圧倒的に連戦連勝だったのには理由があって、王の戦車は、父神アレスから譲り受けたプシュラとハルピンナという駿馬が牽き、伝令神ヘルメスの子ミュルティロスが馭していたのだった。
ペロプスはかつての庇護者ポセイドンに、勝利を祈願する。ポセイドンはそれに応えて、有翼の不死の駿馬が牽く黄金の戦車を、ペロプスに贈る。
それでも不安なペロプスは、オイノマオス王の馭者ミュルティロスを買収し、王国の半分とヒッポダメイアの初夜をやるから、自分を勝たせてほしい、と持ちかける。あるいは、美貌のペロプスに一目惚れしたヒッポダメイアが、同じ報奨を約束して、ミュルティロスを説き伏せたともいう。
もともとヒッポダメイアに惚れていたミュルティロスは、オイノマオス王の戦車の心棒から楔を抜いておいた。あるいは、蝋の楔を差し込んでおいたともいう。
いよいよ競走が始まると、王は先行するペロプスを猛追し、ペロプス目がけて槍を構える。その瞬間、王の戦車の車輪が外れ、転げ落ちた王は手綱に絡まって戦車に引きずられる。
王は、それが馭者ミュルティロスの裏切りの仕業だと悟って、死の刹那、ミュルティロスを呪う。どうかお前も、同じくペロプスの手で殺されるように、と。
その後、王は馬を脅かす悪霊タラクシッポスになったという。
To be continued...
画像は、E.F.バーニー「戦車競走でオイノマオスを破りヒッポダメイアを得るペロプス」。
エドワード・フランシス・バーニー
(Edward Francis Burney, 1760-1848, British)
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