チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
+昭和50年代~現在のお話も・・・

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第17話 床屋さん

2006年12月06日 | チエちゃん
 チエちゃんのヘアスタイルは、小学3年生頃まではちびまる子ちゃんのようなおかっぱ頭でした。当時の子どもたちはどの子も似たような髪形でした。
4年生以降は横分けのショートカットにし、前髪をヘアピンで留めていました。
そして、2~3ヶ月に1度の割合で床屋さんに行きました。

 チエちゃんの村には4軒の床屋さんがありました。
1軒目は例のベレGのお兄さん家のお隣です。ここはチエちゃん家に一番近かったのですが、御用達ではありませんでした。腕が悪かったのかもしれません。
2軒目はチエちゃんのクラスメートのお父さんが経営する床屋さん。ここはチエちゃん家から遠い村はずれにありました。

残る2軒は、村の中心商店街にありました。
 シゲ床さんは男性客中心のお店。チエちゃんのお父さんもここに通っていました。
 ハナ床さんは子ども客が多いお店でした。ここのおばさんは泣いたり、むずかったりする子どもの扱いがとても上手だったのです。それでチエちゃんもずーっとこの床屋さんのお世話になっていたのです。
床屋さんというのは、どうもこの家庭はココと決まっていたようです。

 チエちゃんは、カットが終わって顔やうなじを剃ってもらい、最後に耳たぶを剃ってもらうのがなぜか心地よく好きでした。そして、最後によい匂いのするパウダーをつけてくれるものうれしいことでした。その日1日ちょっとおしゃれをした気分になれたからです。

 それより何より、もっと楽しみなことがありました。
それは、マンガ本がたくさんあったことです。
この床屋さんはいつも混んでいて、最低でも待ち時間が1時間はありました。その間に2~3ヶ月分のマンガ本を読破してゆくのです。
 当時大人気だった「巨人の星」が1番のお目当てでした。それ以外にも、石森章太郎(改名後 石ノ森章太郎)先生の「サイボーグ009」、辻なおき先生の「タイガーマスク」、赤塚不二夫先生の「おそ松くん」、松本零士先生のパンツマンガ、藤子不二雄先生のいろんな作品など、たくさんたくさんありました。

 中でも、チエちゃんの印象に残っているのは、池上遼一先生の日本版「スパイダーマン」でした。これは主人公の心理描写が多くて、その苦悩が伝わりひどくせつない物語でした。
 もう1つは、作者も作品名も忘れてしまったのですが、おそらく月刊誌の単発もので、戦争中敗戦が濃くなった日本兵が孤島で生きてゆくために人肉を食べるというお話。これは強烈な印象で、その後のチエちゃんの読書歴に影響をあたえました。

 チエちゃんは、どうもギャグマンガよりシリアスストーリーものが好みだったようです。散髪が終わっても全部読みきっていないときは「おばちゃん、マンが読んでもいいですか?」と訊いて、すべて読み終えてから家に帰ったものでした。

 チエちゃんは中学生になると、突然少女マンガを止めて少年マンガに移ったように話しました(第5話少女まんが)が、実はこの床屋さんにその下地があったというわけです。

    

第16話 たきぎ当番

2006年12月03日 | チエちゃん
 その日、チエちゃんは薪当番でした。
昨日、おじいちゃんが燃え易そうな小枝をまとめて、縄でくくってくれました。縄を輪にして、持ち手も付けてくれました。ちゃんと玄関の土間に置いてあります。

 元気よく、行ってきま~すと飛び出したチエちゃんですが、その薪を持っていません。集団登校の集合場所、公民館に着いてもその事に気がつきません。
チエちゃん家から小学校までは1.5km。
ちょうど、その真中あたりで、チエちゃんは突然思い出しました。

アッ、しまった! たきぎを忘れた!

チエちゃんはあわてて家に戻りました。

 チエちゃんの小学校では、11月下旬になると石炭ストーブで暖房をしていました。その石炭に着火するために薪が必要だったのです。当番で子どもたちが各家庭から持ってくることになっていました。

 家に戻り、薪を持ったチエちゃんは、誰もいなくなった道を学校へ急ぎました。
息を切らして教室にたどり着いたとき、何とか朝の会(ショート・ホームルーム)に間に合いました。そして、ストーブはもう赤々と燃えていたのです。
こんな時に備えて、当番は2人いたのでした。
なあんだ、家に戻らなくてもよかったんだ。

 この薪当番は3年生まで続きました。4年生になると、新兵器が現れました。
太い針金の先に石綿を付け、その石綿に灯油を染み込ませておくのです。これに火を点けて薪の代わりにしました。当番は、用務員のおじさんの所にこれを取りに行くことになりました。

 チエちゃんが小学生の間はずっと、この石炭ストーブでした。中学校では石油ストーブを使っていたので、やっぱり中学校は進んでいるなと思いました。
ちょうどこの頃、石炭から石油に変わる時代だったのでしょうね。

石炭ストーブは、時々石炭をくべたり、燃えた後の灰を片付けたりする手間がかかりましたが、覗き穴から見えるチロチロとした炎やじんわりとした暖かさが心地よかった気がしています。
4時間目になって、みんなのお弁当をストーブのまわりに置いて温めると、ぷ~んといい匂いがしてきたことも思い出となっています。