チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第20話 スバル360

2006年12月15日 | チエちゃん
 担任の小木先生は、チエちゃんが4年生のとき、大学を卒業してやってきた新任の先生です。チエちゃんが小学校を卒業するまでの3年間、お世話になりました。

小木先生の愛車はてんとう虫の愛称で親しまれた〝スバル360〟でした。
このクルマは、フォルクスワーゲン・ビートルを模して作られたと言われ、360CC空冷2サイクル2気筒エンジンがリアにありました。中でもユニークだったのが、ドアが前から後ろへと開くタイプだったことです。昭和33年から45年まで、スバル360が比較的低価格で生産販売されたことから、一般庶民にも車が普及したと言われています。

 180㎝近い長身の小木先生が、体を窮屈そうに縮めて運転している姿はちょっと滑稽でした。先生は、この中古のスバル360を月賦で買ったんだと思います。だって、新採用の安月給取りの教師が、ポンと買えたはずがありません。
そして、このスバルはポンコツでした。時々、故障しては学校のまん前にあった自動車修理工場に預けっぱなしになっていたからです。

 当時、チエちゃんの小学校の先生20人ぐらいの中で、クルマで通勤していた先生は4~5人だったと思います。他の先生たちはバスか、自転車、オートバイなどでした。地元に住んでいた先生も少なくありません。小木先生も小学校のすぐ近くに下宿していたので、スバルを通勤に使っていたわけではありません。

 チエちゃんは小木先生のスバルに乗ったことがあります。
それは家庭訪問のとき、村の地理に不案内の先生を家まで案内したからです。
家庭訪問の期間中、先生は必ず誰かを乗せて行ったものです。

 卒業を間近に控えた6年生の3学期、チエちゃんとナオちゃんは先生に何かプレゼントをしたいと思いました。そして、思いついたのがこの可愛いスバル360のリアウインドウのところに置くクッションを作るということでした。
2人は放課後の裁縫室やナオちゃんの家で、心を込めて作りました。
卒業式の日、2人はそれを先生にプレゼントしました。スバルの後ろに飾ってほしいと言って。

 中学生になったチエちゃんは、リアウインドウに黄色いハート型のクッションを飾ったスバル360を見かけました。

あっ、小木先生、飾ってくれたんだあ。

今思い返すと、全部手縫いで作った、ひどいクッションだったんですけどね。