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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「スペル」

2009-11-24 06:19:58 | 映画の感想(さ行)

 (原題:DRAG ME TO HELL )素晴らしく楽しい、ホラーの快作だ。何よりサム・ライミ監督が“本業”に復帰したのが嬉しい。

 彼が世間に知られるようになった「スパイダーマン」シリーズを、私はまったく評価していない(そもそもアメコミのヒーロー物の映画化自体に意味がないと思っている)。しかしながら単に“名前を売る”には恰好のネタであり、ドル箱映画の監督という評価は一生付いて回るし、ハリウッドのプロデューサー達が嫌うと言われる“作家性”を発揮しても文句は言わせない立場を手に入れた。その上で満を持してのホラー回帰である。期待しない方がおかしいし、作品の内容もそれに応えて余りあるヴォルテージの高さだ。

 不気味な老婆からのローン延長願いを断ったことで呪いを掛けられた女子銀行員の受難がメイン・ストーリーだが、ヒロインにはほとんど非はないところがポイントだ。明かな“不良債権”を、銀行側としては“それ相応の扱い”をして当たり前。しかもこの老婆は身寄りのない独居老人ではなく、親戚筋も大勢いる。いくらサブプライムローンの影響があったとしても、無条件で銀行が応じる道理はないのだ。

 ましてや主人公はローン延長を却下したことを反省してさえいる。どう見ても落ち度はないのだが、この“罪のないキャラクター”を徹頭徹尾イジメまくるあたりがライミ監督の真骨頂だ。

 地下駐車場での老婆との大々的なバトルを皮切りに、神出鬼没で現れるババアの怪物ぶりは怖さを通り越してほとんどギャグである(特に物置でのスラップスティックな格闘は大爆笑)。さらには魔界からモンスターまでやってくる。それに対して主人公側はおどろおどろしい屋敷での悪魔祓いや、深夜の“墓あばき”など古風な仕掛けで戦うのも楽しい。

 ライミの演出リズムはまったく淀みが無く、全編に渡ってスムーズ。安易なスプラッタ場面に頼らずに、シチュエーションのみでホラーの意匠を形成しているのはサスガと言うしかない。ラストのオチなんて、まさに“これしかない!”という感じのブラックなもの。小道具を前振りに使っているのも、実に上手い。

 主演のアリソン・ローマンは、女優の趣味が最悪だったライミ監督にしてはまあまあのルックスだ(笑)。何となく幸薄そうなところも作品にピッタリ。ジャスティン・ロング、アドリアナ・バラーザなど他の面子も悪くないのだが、何と言っても老婆に扮するローナ・レイヴァーが強烈だ。今後ライミ作品の常連にして欲しいほどの存在感である。とにかく明るくポップな怪異譚で、よほどのホラー嫌いを別にすれば幅広く奨められる。ユニバーサルスタジオ・ジャパンに同映画のアトラクション施設を作って欲しいぐらいだ。
コメント (2)
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