元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「白い船」

2009-11-27 06:26:06 | 映画の感想(さ行)
 2001年作品。島根県の小学校と沖を行くフェリーの交流を実話に基づいて映画化した錦織良成監督作品だが、物語の前提に釈然としないものを感じる。

 たとえば中盤、どうしてもフェリーに近づきたい生徒達が漁船を勝手に操縦して挙げ句の果てに遭難しかけるシークエンスがあるが、やっとのことで救出された子供達を大人は誰も叱らず、ただ“無事で良かった”と言うのみ。これはちょっと違うのではないか? まずは“皆を心配させやがって、この野郎!”という具合にビンタの一発でも入れるべきである。無事を喜ぶのはそれからだ。

 そもそも授業中に窓の外をボーッと見ているだけの不真面目な生徒の“沖合いを通る船に乗りたい”との寝言を大真面目に受け取る教師やPTAには脱力するしかなく(実話だというのなら、尚更ナサケない)、要するにこの映画はドラマの出発点からしてガキにおもねているのだ。

 中村麻美扮する若い女教師の扱いも不十分。表情に乏しく、何を考え何をやりたいのかさっぱりわからない。彼女の同僚・友人役の高橋理奈や白石美帆に主人公役を振った方がずっとマシだったろう。

 明らかな凡作だが、わずかに見所はある。中村嘉葎雄や大滝秀治、奥村公延や宮下順子といったベテラン勢がイイ味出しているし、何より映像が素晴らしく美しい。柳田裕男のカメラによる山陰海岸の美景はそれだけで入場料のモトを取れるし、クライマックスの子供達が乗ったフェリーが町の沖を通過する際に地域の漁師たちが大漁旗を掲げた船団で迎えるシーンの構図には圧倒された。角松敏生の音楽も悪くないし、私のように斜に構えた見方(笑)をしない善男善女の観客のみなさんには十分満足できよう。
コメント
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