元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「リベラ・メ」

2009-11-08 06:41:16 | 映画の感想(ら行)
 (原題:Libera Me )2000年作品。釜山を舞台に、天才的な放火魔と消防署員とのバトルを描くヤン・ユノ監督作品。消防車輌300台、火薬3トン、LPガス6トンを投入して、CGやミニチュアを一切使わない“本物”の火災シーンが韓国中で話題を呼んだらしい。だが、出来としてはどうも芳しくない。

 チェ・ミンスをはじめとするキャストの頑張りを、荒っぽい作劇が台無しにする。だいたい、登場人物が多すぎて主要キャラクターの絞り込みが足りない。説明があるべき箇所もスッポ抜けており、主人公のバックグラウンドや、犯人のハッキリとした動機等が示されないのでは、ドラマにどう感情移入していいのかさっぱりわからない。

 活劇の段取りも最悪で、クライマックスの犯人との対決も、何がどうなっているの不明。このへん、ハリウッド製のアクション編と比べると大きな差がついていると言わざるを得ない。しかし、主人公たちの活躍と、消防士たちの悲愴感・使命感を前面に押し出したラストには感動を覚えるのも確かなのだ。いわば“手法は未熟だけど、情念で押し切ってしまう”という、「シュリ」や「ユリョン」と同じパターンである。

 火災場面は素晴らしい迫力で、ヒロイン役のキム・キュリもキレイなんだけどね・・・・。公開当時に観たときは、正直言ってこういう作品がヒットしていることが韓国映画界にとってプラスになるのかわからないと思ったものだ。いつまでも勢いだけで力任せに行くだけが能ではあるまい(香港映画とは違うのだ)。娯楽活劇でこそ、ウェルメイド指向が必要なのではないか。韓流ブームが一段落した今はあまり出来の良くない作品は輸入されないみたいだが、本国の状況がどうなのか気になるところである。
コメント
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