元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「エンジェル・スノー」

2009-11-12 06:23:44 | 映画の感想(あ行)
 (原題:HARU)2001年韓国作品。結婚6年目なのに子供が出来ない若夫婦(イ・ソンジェ、コ・ソヨン)が最後の手段として人工受精を行ない、めでたく妊娠。しかし、お腹の赤ん坊には重大な障害があることが判明。たとえ生まれても一日しか生きられないという。苦悩の果てに彼等が下した結論とは・・・・。監督は若手のハン・ジスン。本国で公開された時には大ヒットしたという感動作だ。

 第一印象は“実に平易に作ってあるなぁ”というものだった。同じ韓国映画のヒット作でも「JSA」や「シュリ」が(ジャンルは全然違うけど ^^;)技巧に走り、映像でリードしようとしたのとは全然異なり、かといって「八月のクリスマス」や「美術館の隣の動物園」のように作者の才気を全面に出した“ミニシアター路線”でもない。誰が観ても理解できる語り口で全編が覆われている。特に映像面では目立った工夫もなく、平板といってもいい。

 しかし、ドラマ自体は十分に感動的なのだ。思うに、この作家は物語の重要性を完全に信じ切っている。ストーリーが普遍的で観る者の心を打つものである以上、余分なケレン味など不要で、忠実にドラマを破綻無く積み上げていけば観客は必ずついてきてくれる・・・・といった率直さと謙虚さが映画の成功に繋がっている。

 無理のない脚本もさることながら、キャストの頑張りには目を見張る。「アタック・ザ・ガス・ステーション!」などで日本でも知られるイ・ソンジェが気弱そうで心優しい夫を好演。妻役のコ・ソヨンの激しい性格と好対照を成す。なお、コ・ソヨンはその年の大鐘賞(韓国アカデミー賞)主演女優賞を受賞。“ヒロインのキャラクターが激しすぎる”との意見もあるだろうけど、監督の話によると彼女の演じる役柄としてはこれでも随分と“おだやかな部類”なのだという(笑)。

 “皆から祝福されないで産まれてこない子供なんていない”と何かの本に書いてあったが、ラストにはそのことを思い出さずにはいられなかった。
コメント
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