元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「空の穴」

2007-02-11 07:03:32 | 映画の感想(さ行)

 本年度のアカデミー助演女優賞にノミネートされた菊地凛子が、前の芸名の菊池百合子で出演した2001年作品(詳細はこちら)で、監督は熊切和嘉。熊切監督のその時点での前作「鬼畜大宴会」は観ていなかったが、この映画に限っては登場人物の心理描写に卓越したものを感じ、なかなかの演出家だと見た。

 父親は嫌われ者、母親は家出し、だからといって自分から何かしようともせずにいつのまにか中年にさしかかった主人公は鬱屈した気持ちを抱えながら北海道の田舎町の食堂を切り盛りするしかない。そこにフラリと現れた都会育ちの若い女と少し仲良くなったことに有頂天になり、誠実なフリをして、はては安易に亭主風を吹かせてしまう「男の純情」が哀しい。

 でも、舞台挨拶で寺島進も言っていたが、男なら誰しもこういう「自分勝手な純情さ」を持っているわけで、このへんのどうしようもなさを巧みすくい上げた作劇は見事だと言える。物語は予想通りの結末になるが、少しばかりの希望を匂わせるラストは、実に後味が良い。寺島は好演。菊地百合子の存在感もこの頃から際立っていた。

 本作はアジアフォーカス福岡映画祭にて鑑賞したのだが、寺島進は白いスーツに黒いシャツ、そして白いネクタイ、もちろん髪はオールバックと“コイツはどこの組の者だ!”という出で立ちだったのには笑った。

 なお、ゲストで来ていた菊地嬢にサインを貰って握手した。舞台挨拶の時はそれほどでもなかったのだが、至近距離から見ると本当に可愛い。それと、握手しようとしてこちらが右手を出すと、あっちは両手でしっかり握り返してくれて、無邪気に喜んでしまった私であった(おやじモード ^^;)。
コメント (2)
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