元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「千と千尋の神隠し」

2007-02-04 16:34:06 | 映画の感想(さ行)
 2001年作品。同年のキネマ旬報度日本映画ベスト・テンでは第3位。 先日テレビ放映もされていた、誰でも知っている大ヒット作である。

 まずは舞台設定と大道具小道具、美術とクリーチャー・デザイン、および音楽に圧倒される。ハリウッド映画など足元にも及ばない豊かなイマジネーションの洪水。特に“海上を走る列車”のシーンの素晴らしさは何と言い表せばいいのか。久々に思う存分映像に酔える作品である。

 しかし困ったことに、こういう“意匠の豊潤さ”が映画自体の出来云々ということ以上に目立ってしまっている。ストーリー本体は肌触りは良く、観客の神経を逆撫でする描写はあまりないと思われるが、有り体に言えば“よくある少女の成長物語”であり、それ自体は可もなく不可もない。各エピソードの起承転結もハッキリしておらず、とにかく脚本が完全に及び腰で、終盤には退屈してしまった。

 ただし、この映画が当時日本映画史上最高の興収をあげたのは、その“ほどほどのウェルメイド加減”であることは言うまでもなかろう。大衆はハードなテーマや心の底からの感動なんて映画に求めていない。そこそこ“いい話”を、贅を極めた“外見”で飾り立てればよい。それこそが興行の王道であろう。それにしても、邦画の興収の首位をアニメーション映画が更新していったという事実はちょっと寂しい。実写映画も頑張ってほしいものである。
コメント
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