元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「若草物語」

2007-02-12 07:44:17 | 映画の感想(わ行)
 (原題:Little Women)94年作品。イザ・メイ・オルコットの有名な原作の4度目の映画化で、監督は「わが青春の輝き」(78年)「燃えつきるまで」(82年)などの女流ジリアン・アームストロング。南北戦争時代のマサチューセッツ州。父親を戦地に送り出した女だけの家庭の十数年間を描く。

 気丈な母(スーザン・サランドン)をはじめ四姉妹のキャラクターはキッチリと描き分けられていて、正確な時代考証と大道具・小道具にも細心の注意が払われ、ジェフリー・シンプソンのカメラが捉える重厚で落ち着いた映像とトーマス・ニューマンの音楽が見事なマッチング。主要スタッフがすべて女性であるせいなのか、きめ細かく肌触りのいい作劇が何より印象的な映画だ。

 当然、古典の映画化には不可欠の“現代的なニュアンス”も忘れてはおらず、ここでのヒロインたちは、自分の主張をハッキリ持つ自発的なキャラクターの面を強調されている。自分の趣味を彼氏に軽く見られた次女(ウィノナ・ライダー)が決然と別れる場面や、“金持ちとしか結婚しない”という四女(サマンサ・マチス)のセリフなどはその典型。反面男性陣が頼りなく見えるのも仕方ないかもしれない。

 しかし、確かに良心作だけど観終わって何となく印象が薄いように感じる。それは作品の評価と相反するかもしれないが、ウェルメイドに過ぎることが原因だと思う。今回の映画化は見事に予想通りのクォリティだが、古典をあえて映画にするからには少々の新しいニュアンスを取り入れるだけでは、方法論的に面白くないのではなかろうか。ここはやはり、身近で等身大のキャラクターを完全に無視して、大時代なロマンティシズムを前面に押し出して、めいっぱいハッタリかましてほしかった。

 私は確か子供の頃に原作を読んでいる。内容はほとんど忘れているが、次女がドイツ人教授のおっさんと仲良くなるあたりから面白くなくなったことを覚えている。映画でもやっぱりそうで、若いウィノナ・ライダーとショボくれたガブリエル・バーンとの対比はツラいものがあった(笑)。もっと大胆に脚色できなかったものか・・・・。

 演技面ではサランドンの存在感が光っていたが、当時は子役のキルスティン・ダンストが奇妙な味を出している。このころは、将来は味のあるバイプレーヤーに成長するのかと思ったのだが、今は・・・・(あえて語らず ^^;)。時の流れを感じる今日この頃である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする