気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

野紺菊  藤井順子 

2016-05-27 18:18:41 | つれづれ
藁を積む車が信号曲り行く藁の匂をまといながらに

乾きつつちりめんじゃこになる魚の眼に藍の色残しいつ

朝露の残れる蕪の間引き菜を漬け終えて指の先は冷えたり

梨は梨葡萄は葡萄の匂いして自死せし娘の遺影に供う

逝きたりし娘(むすめ)の部屋に雛人形飾ればそこより春となりゆく

時おりはおひとり様にあこがれて停年の夫と三度の食事

花柄のブラウス一枚加えられにわかに艶めく春の箪笥は

金屏風なけれど花婿花嫁の坐るうしろに海の青見ゆ

ひと雨の降るごとに秋ややうごき青冴えざえと夏草の群れ

野紺菊群るるむらさき丘の上(へ)の娘(むすめ)の墓まで野の道をゆく

(藤井順子 野紺菊 現代短歌社)

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八雁所属の藤井順子の第一歌集『野紺菊』を読む。

藤井さんとはお会いしたことがないが、島根県の方で石田比呂志にずっと師事した来た。
真っ当で地に足のついた生き方が歌に滲み出ている。四首目、五首目にあるように、二十歳代の娘さんの自死が詠われていて、歌集の核となっている。歌を詠むことで救われる面があったと思いながら、そう簡単にまとめてしまうことに恥ずかしい気持ちも持ってしまった。ますますのご健詠をお祈りします。

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