気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2008-07-08 00:46:16 | 朝日歌壇
一面に「殺」の字の濃き新聞を裏返しにしてテーブルに置く
(和泉市 星田美紀)

シャンデリアのごとくきらめく噴水の前に四人のホームレス坐す
(沼津市 森田小夜子)

泰山木白くともりて夏服の少女の襟が小さき弧を描(か)く
(京都市 八重樫妙子)

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一首目。悲惨な事件のニュースに並ぶ「殺」の字を見ると、恐ろしく気が滅入ってしまう。そこで、その場しのぎに裏返しておくことは私もよくする。なんの解決にもならないのだけど。昨日の研究会のときに出た、香川ヒサの歌にも「できごとを満載したる新聞はきつちりたためばきれいに片付く」というのがあった。哀しい事件から目を背けてはならないが、そればかり見ていても、現実として生活していけないのだ。新聞を裏返すのも自分を守る知恵のひとつかもしれない。
二首目。シャンデリアのような噴水と、四人のホームレスの対比が、歌としておもしろい。四人という具体的な数字が出ているのもよい。
三首目。夏らしい爽やかな歌。泰山木の白から、目をうつすと夏服の少女の白い襟が見えた。丸い白い襟のよそいきのワンピースというのは、ほとんどの女の子は経験している。本人が気に入っていたり、親のお気に入りだったり。ほのかな懐かしさも感じる。

↓の歌は、2005年の作品で、このときは朝日新聞に「花おりおり」が連載していた。旧かなだと、花をりをりなのだけど、新聞の表記の」とおりに花おりおりとして「」でくくった。

惨き事件載る新聞は折りなほし「花おりおり」を外側にする
(近藤かすみ)


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