気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

歌集 魚政の親父  植山俊宏

2008-10-02 18:45:19 | つれづれ
待ち人と托鉢僧が二人してゆりかもめ見る四条大橋

大和芋は拳ほどあり店先にごろごろ春をころがしている

魚政の親父はしばし道に出て春雷の行方追いかけており

タクシーで「師団街道を南へ」と告げてしばしの指揮官となる

師団街道朝日湯勝利湯軍人湯みんな現役で働いており

俺の指は希なる吉相渦巻紋髪もなでるしむすびも食らう

昔はねボタンは貝でできていた欠けると小さな虹が出てきた

(植山俊宏 魚政の親父 ながらみ書房)

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心の花京都歌会の植山俊宏先生の第一歌集が、いよいよ出版された。
この歌会は、坪内稔典先生を中心に運営されていて、他の結社の人間も受け入れてくださる懐の広いところである。しかも雰囲気はとても家庭的。あとがきによると、植山先生も稔典先生とのご縁で短歌を始められて17年とのこと。『鱧と水仙』の同人でもある。

一首目。そう言えば、四条大橋、三条大橋には時折り托鉢僧が立っている。ゆりかもめを配して京都らしい一首。
二首目。大和芋の歌。大和芋がごろごろと転がされるのではなく、春をころがしているという発想がおもしろい。途中まですんなり読んできて、下句でねじれて逆転しているところに味わいがある。
三首目。歌集の題ともなった魚政の親父は、実在の人物なのだろうか。魚政の親父と春雷の取り合わせが良い。
四首目、五首目。植山先生は伏見区にお住まいで、師団街道の近くなのだろう。京都の歴史の一端を感じさせるこの地名を入れた歌が面白い。朝日湯はありそうだが、勝利湯、軍人湯なんて、本当にあるのだろうか。興味が湧く。
六首目。ちょっと乱暴な言い方だが勢いを感じる。
七首目。昔はね…という柔らかい語り口で歌が始まる。結句の「虹が出てきた」も面白い表現。



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