気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2010-02-07 22:09:53 | 朝日歌壇
水を蹴り首を伸ばして羽ばたけば空へずしりと白鳥は浮く
(館林市 阿部芳夫)

職人の指の先よりふっくらと甘い香りの紅梅ひらく
(広島県 今井洋子)

雪降らぬ街となりたる大阪を貨物列車が雪積み走る
(高槻市 奥本健一)

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一首目。選者の佐佐木幸綱先生もおっしゃっているが「ずしりと白鳥は浮く」の表現に感心した。白鳥の重量を感じさせる。対象物をよく見て作ることの大切さを痛感する。
二首目。紅梅の形の和菓子を作っている様子だろう。紅梅そのものを職人が咲かせたように感じられる。和菓子と言わなくても、職人、甘いからそうとわからせる作りの歌。
三首目。確かに大阪の熱気は、夏も冬も続いていて、雪が降らなくなったのかもしれない。遠くの雪の降る街から来た貨物列車の屋根にのみ、雪がある。人間はどこまで自然に逆らって生きるのだろうと考えさせられる。

永田和宏先生選の「ポストへと手を入れるたびグレゴリー・ペックが微笑む気がする逗子の平日」(逗子市 中原かおり)も気になる歌だった。四句目が字余りになっているが「気にする」を取るとほぼ定型に納まる。映画「ローマの休日」を念頭に置いて、逗子の平日としたところに諧謔味がある。グレゴリー・ペックが微笑んじゃってもいいのではないだろうか。



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