気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

郵便受け

2006-03-26 22:20:34 | つれづれ
草つゆに濡れし軍手の重たさに国歌は低くうたひ出すなり

縁の下の暗がりいつか消え失せてのつぺらぼうの子供が殖える

窓も戸も明け放ちたる島の家にひとすぢ垂れて揺るる掛軸

白鳥(しらとり)が郵便受けにねむりをり こんなにとほい南島に来て

文学と言ひかけ文芸と言ひ直すこの含羞はいづくより来る

(渡英子 レキオ 琉球)

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渡英子さんはだんな様の転勤に従って沖縄に転居された。
短歌人会の全国大会で遠目にお見かけしたことはある。

一首目。軍手の湿った重たさと国歌(君が代だろう)の歌いだしの重さがうまく呼応している。
二首目。いまの子供は、親に隠れて退屈な時間をすごすことがない。どこにいても携帯でつながっているのだろう。息苦しいことだと思う。いま、縁の下より暗くてこわいものは、なんだろう。
三首目。沖縄へは行ったことがないので、テレビなどの情報しかしらないが開放的な沖縄の雰囲気が伝わる。歌のなかを風が通ってゆく。
四首目。白鳥は手紙だろうが、作者の投影でもある。こんな遠くまで来た。しかし、短歌を通じて遠くの読者と繫がっているのだ。渡さんちの郵便受けはどんなのだろう。
五首目。なるほど。文学部と文芸部のちがい?



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