気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

万の指 鈴木紀子 

2011-07-16 23:53:05 | つれづれ
花冷えを素早く知れり瓶に残るバージン・オイルの白きくもりよ

はつなつの水溜りの雲飛び越さむフレアースカートの幅一杯に

天平の風の楽人まみえたりすいばぎしぎしかすかに奏す

眠る前水飲むわれと家猫と ためらひためらひ春は来てをり

一刀両断世を直さむと近藤勇誰でも良かつたなどとは言はず

甘露飴しやにむに舌が欲りてをり受話器に喜寿の声の幸ちやん

忘れねば覚えてゐたり八月のカンナは朱しダアリヤは赤し

万の指天に昇れりひろしまの夏の電車に揺られてゐたり

いもうとはいまもいもうと盂蘭盆会 コンペイトウのピンクはあげる

預りし曾祖父部屋に眠りをり「にんげんみたい」四歳が言ふ

つばめ印自転車に来て亡き父がさうか六十か短く言へり

(鈴木紀子 万の指 ながらみ書房)

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鈴木紀子さんの第一歌集『万の指』を読む。
実は鈴木さんとは面識がなく、なぜ私のところに歌集が送られてきたのか不思議だが、ありがたく読ませていただく。
集題の『万の指』の歌は、広島旅行のときの歌だろうか。被曝して亡くなった人の指に注目したところが秀逸だと思う。
一首目、二首目のような若々しい感性の歌があるかと思えば、亡くなられた妹さん、お父さまの思いでの歌があり、さまざまは登場人物が鈴木さんの眼を通して個性豊かに現れる。いろいろな技を見せていただいた気がした。

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