エゾノギシギシ おまへは同志 さあ今日も野に出て緑の汗流すのだ
青き山の真上の雲の仁王立ち仰ぎつつ明日を歩きてをりぬ
ざらざらの指だ ごはごはのてのひらだ 年ねん木賊のやうになりゆく
南瓜ひとつ抱へて妻が歩み来る霜に濡れたる石を踏みつつ
釘ぬきに抜かるる釘の鈍き音に浮かび来父の太き親指
墨色の廃油の染みし生命線洗へば明日が近づいて来る
鎌をあつれば褐色の実をふりこぼすエゾノギシギシ また秋が来る
長靴は足の抜け殻ほのぐらい闇を宿して突つ立つてゐる
てのひらのぶ厚い男と飲みながら千年前の話してゐる
紺瑠璃の空を翔け来る一羽ありたつたひとりの弟ならむ
(時田則雄 エゾノギシギシ 現代短歌社)
***********************************
時田則雄の第十二歌集『エゾノギシギシ』を読む。
1946年北海道生まれ、百姓、とあるように、農作業の歌が多い。北海道帯広市で大規模に農場を営むと聞く。
歌は素直で、大自然と、そこで生きる家族が主なテーマとなっている。
歌集名『エゾノギシギシ』は世界の五大雑草と呼ばれるほど繁殖力の強い草。
自分を投影するように何度もくりかえし、エゾノギシギシを詠んでいる。
五首目の釘抜きの音からの父への連想。九首目の「てのひらのぶ厚き男」で、相手のすがたや労働の様子を思わせる歌に注目した。
青き山の真上の雲の仁王立ち仰ぎつつ明日を歩きてをりぬ
ざらざらの指だ ごはごはのてのひらだ 年ねん木賊のやうになりゆく
南瓜ひとつ抱へて妻が歩み来る霜に濡れたる石を踏みつつ
釘ぬきに抜かるる釘の鈍き音に浮かび来父の太き親指
墨色の廃油の染みし生命線洗へば明日が近づいて来る
鎌をあつれば褐色の実をふりこぼすエゾノギシギシ また秋が来る
長靴は足の抜け殻ほのぐらい闇を宿して突つ立つてゐる
てのひらのぶ厚い男と飲みながら千年前の話してゐる
紺瑠璃の空を翔け来る一羽ありたつたひとりの弟ならむ
(時田則雄 エゾノギシギシ 現代短歌社)
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時田則雄の第十二歌集『エゾノギシギシ』を読む。
1946年北海道生まれ、百姓、とあるように、農作業の歌が多い。北海道帯広市で大規模に農場を営むと聞く。
歌は素直で、大自然と、そこで生きる家族が主なテーマとなっている。
歌集名『エゾノギシギシ』は世界の五大雑草と呼ばれるほど繁殖力の強い草。
自分を投影するように何度もくりかえし、エゾノギシギシを詠んでいる。
五首目の釘抜きの音からの父への連想。九首目の「てのひらのぶ厚き男」で、相手のすがたや労働の様子を思わせる歌に注目した。