気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

ねむりの果て 小谷陽子 本阿弥書店

2019-03-20 12:43:53 | つれづれ
風にさやぐ楠の木は船わたくしを乗せて真青(まさを)の空に向かへり

夜のまへ夜のうしろを照らしつつはろばろとゆく旅の列車は

いづくより汝は来たると問はれをり吊り橋まなかに身は揺られつつ

鉄棒にさかさに下がりしかの日よりこの世は青き洞(ほら)のごとしも

しばらくを分かれふたたび相寄りぬ中洲といへるこの世の時間

ゆうらりと春の夕べを空に向きほどけてゐたりくちなはの坂

山百合の花の傾斜のゆるらかなお辞儀したまふ秋の媼は

たべものとひとのあはひに水平に置かれて香る杉の木の箸

すつぽん屋の木札のゆれてうらがへる路地の入口「生血アリマス」

先生のつむりのかたちを知る帽子グレーのソフトの窪やはらかく

(小谷陽子 ねむりの果て 本阿弥書店)

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