気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

鳴 なみの亜子

2006-03-11 18:57:28 | つれづれ
ゆっくりと紙飛行機を折るように部屋着をたたむあなた アディオス

死ぬときもひとり 小型の掃除機の背筋伸ばして立っている部屋

妻たちに白旗ある朝窓々にメゾン阿倍野はシーツ垂らせり

いつかふと居なくなること案じあい二人乗りする動物園まで

生まれたしついでに生きてるだけやんか珈琲色の影をもつ猫

(なみの亜子 鳴 砂子屋書房)

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塔のなみの亜子さんの第一歌集。
一首目。「あなた アディオス」という結句がうつくしい。部屋着をたたむのはあなたで、そのあなたにアディオスと言っているのか、それとも作者が部屋着をたたんでいるのか、どちらともとれる。どちらでもいいような気がする。
二首目。「死ぬときもひとり」から、孤独感と孤独への覚悟が読みとれる。掃除機は作者の象徴か、作者は部屋で見てるだけか、どちらだろう。
三首目。ディープ大阪という一連から。白旗は降伏の意味。白旗のように垂れているシーツがそれぞれの妻の疲れを感じさせる。
四首目。この動物園は天王寺動物園だろうか。男と女は二人乗りしていても、仮初だからこそ今を楽しむ。
五首目。大阪弁の「だけやんか」に惹かれる。なみのさんは愛知県生まれらしいが、ここでは大阪の女の倦怠を感じた。
歌集の前半、大阪の部分からは車谷長吉の小説『赤目四十八瀧心中未遂』を連想した。

ちょっと事情があって、ここ数日ブログの更新をしていなかったが、たくさんの方に訪問していただいた。ありがとうございます。
私はわたしのペースで。



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