気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人4月号 春のプロムナード つづき

2014-04-16 18:18:38 | 短歌人同人のうた
目見(まみ)ほそく視力おとして感覚の樹に寄りゆかむ手ぶくろを脱ぎ

がさごそと居心地わろき音たてて稼働すねむたき春の心臓

(感覚の冬 柚木圭也)

どこまでもどこまでも分け入らむ 草 動くから 詩句に動くから

沈着しあるいはすばやく手の指がページを押ふ詩人のやうに

(麝香 Ⅳ あなたへ 西村美佐子)

主婦らしき処よりこころ逸れゆきてあまたの本の置場にまどふ

生きてゐる家を殺めて生きのびむ京のうしとら花折断層(だんそう)の上

(家を殺める 近藤かすみ)

われの茎の維管束まで染む冷気出勤前にエンジンかける

気になる人座敷に残し外に出るススメと冬の大三角形

(大三角形 澤志帆)

ラジオより坂本九のうらごゑの流れきたりぬ涙にじめり

日本酒のうまさやうやくわかるころ残念ながら晩年である

(晩年 大橋弘志)

ふた粒のひかりは床(ゆか)にこぼれをり「ゆめぴりか」とふそのゆめのつぶ

美濃は雪、飛彈も雪とぞ明日のためゆふべ尾張の牛蒡をあらふ

(ゆめのひかり 春畑茜)

芽を出さぬひとつ球根「完全に削除しましか」問はれてをりぬ

コーヒーはいつもの味だ積みし雪よごれはじめる朝を出でゆく

(明日からも 大越泉)

この年は咲きしばかりの梅が枝に何年ぶりかの大雪降れる

食べ残す蜜柑にメジロ一羽来てひそと食みいる雪の日の夕

(恋文のはじめは 橘圀臣)

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短歌人4月号、春のプロムナードより。