気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2014-04-13 19:15:15 | 朝日歌壇
拇印押しデヅラ受け取る飯場にて帰り道熊の心配している
(ホームレス 坪内政夫)

百枚の二円切手を買うて来ぬ兎あふれん四月のポスト
(春日井市 伊東紀美子)

この場所で初心にかえる内定の乾杯をした書店のカフェで
(東京都 上田結香)

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一首目。デヅラという言葉を初めて知った。賃金のことらしい。選者の高野公彦氏のコメントに「熊さんの体調を案じる優しい作者」とある。熊は人間の友達の名前をいうことか?
私は、熊は動物と読んだ。野生の熊、動物園の熊を突然思い浮かべて、どうしているかと想像するなんて面白い。取り合わせも意外でいい。詩情がある。熊を人間の名前と読むと、当たり前の人情噺になってしまう。新聞歌壇だから、そう読むのだろうか。作者に聞く術がない。
二首目。下句がいい。消費税の値上げに伴い郵便料金もアップして、兎の絵柄の二円切手を足さなくてはならなくなった。郵便ポストには、印刷された兎が溢れるほどあるだろう。まるで本物の兎がたくさん居るように思わせて愉快だ。四月のポストが効いている。
三首目。仕事に倦んできたとき、内定をもらって乾杯した場所に戻るという作者。初心に戻ることの大切さを知らされた。書店のカフェというのも現代的だ。