気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2012-10-22 20:06:35 | 朝日歌壇
ごんぎつねも通ったはずの川堤燃えあがるようにヒガンバナ咲く
(名古屋市 中村桃子)

税理士はああ陰気なる仕事にて五十年余を過ごしきたれり
(高松市 菰渕昭)

兀兀(こつこつ)と人生きるなりふくしまの重いひき臼しずかにまわし
(福島市 青木崇郎)

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一首目。ヒガンバナの季節。ヒガンバナから童話「ごんぎつね」に連想が行くのは、絵本のせいだろうか。短歌人の先輩春畑茜さんの歌集『きつね日和』にも、ごんぎつねの歌があったことを思い出す。春畑さんは名古屋在住。
二首目。税理士の仕事を詳しくは知らないがたしかに陰気なデスクワークである感じがする。「ああ」の詠嘆、五十年余の具体的な年数に説得力がある。
三首目。兀兀という字をこの歌で初めて知った。「ふくしま」のひらがな表記は、「重い」の漢字を際立たせるためだろうか。二句目が「人生きるなり」と文語になっているので、「重いひき臼」は、「重き」でもよい気がする。口語も文語も混じって当たり前の風潮だが、どうなのだろう。表現に正解はない。