気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2012-10-01 18:55:36 | 朝日歌壇
百年前南極に立ちし白瀬中尉名前の矗(のぶ)のひたむきなさま
(大和郡山市 四方護)

逝きし娘(こ)と同じ瞳(め)をして振り返る少女に会いに美術館に行く
(茨城県 清水光代)

贋といふ李朝の瓶をいとほしむ草の穂させば膚にもつ艶(つや)
(たつの市 藤原明朗)

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一首目。人名漢字の歌。直を三つ重ねて「矗」という字は、この人の名前でしか見ることは少ない。しかし実直な人柄がよくわかる。人は名前に合う性格になるのだろうか。親の願いが通じるのだろうか。最近の判じ物のような名前もまた親の思いだろう。
二首目。「振り返る少女」から、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を連想させる。「逝きし娘」がなんとも切ない。娘さんは、いつまでも若く美しいままで、作者の中に生き続けている。
三首目。初句の「贋」という言葉で、答が出てしまっているが、作者の愛着で、ほんもの以上の艶を見せる瓶。人と物の交流、友情のようなものを感じた。