気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2012-03-26 19:45:58 | 朝日歌壇
供へなす盃(はい)の白酒ひかへめに余震の絶えぬ雛(ひひな)の祭
(仙台市 坂本捷子)

さんかんしおんさんかんしおん鐘(カリヨン)の響きに浅き春近づきぬ
(堺市 梶田有紀子)

きのうきょうあしたあさってやなさってそして一年、そして一生
(福島市 美原凍子)

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一首目。雛まつりのお供えの白酒さえ、余震にこぼれないように控えめにするという。具体的な事柄が出て、よくわかる歌になっている。早く余震が治まってほしいと祈るばかり。
二首目。韻律のいい歌。上句のひらがな、鐘にカリヨンとルビをふるところなど、工夫があって楽しい。今日はまだ寒でした。
三首目。福島市 美原凍子の名前があって、より一層生きる歌だ。室蘭市から福島市へ転居されて、落ち着いて暮らしておられると、遠くから安心していたのに・・・。読者みんなが応援している。

まなざさる 菊池孝彦  

2012-03-26 00:20:35 | つれづれ
人生泣き笑いと言えば分かったつもりになるのが危うい

逃げ足のはやい雲とおもえばわらうほかなし坂のぼりゆく

率直に述べたつもりが喉を出たときには言い訳である

生きるにはほどよいひねくれ方をするはなかなかのもの

目から落ちないうろこ数枚ひらひらさせてひらひらとゆく

この道を往くと決めたからにはこの道を往く さびしくてよし

的中をさせるな少し外した方が点は高いと奥義のごとく教えられたり

きさらぎの冷えやすき指先から夕暮が来ているらしい

電車は一両目から曲がり始めるそれ以外の曲がり方なし

やりたいこと十あるうち一つできれば人生それなりのかたち

(菊池孝彦 まなざさる 六花書林)

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短歌人同人の菊池孝彦の第二歌集『まなざさる』を読む。
あとがきによると、「「まなざす」は名詞「まなざす」を動詞化したもので、その未然形に受け身の助動詞「り」の連体形を付した「まなざさる」を本歌集名とした」とある。
自由律、新仮名の作品を集めてあり、短歌的とは言いにくい作品ばかりだ。読みはじめて、従来の短歌に慣れた頭には???!!!という感じ。
一首目、三首目、十首目のように、人生訓、警句と読めるものが多い。なるほどと思う。
七首目は内容として、真実を突いている。それにしても、定型でないので、読みにくい。読みにくさが「味」なのだろう。
八首目は、叙情的。
九首目からは、奥村晃作の「次々に走り過ぎ行く自動車の運転する人みな前を向く」を思い出した。
この『まなざさる』と、ほぼ同時に第三歌集『彼の麦束』も刊行された。菊池さんのこのパワーはなんだろう。こちらの紹介は次の機会にしたい。