気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人3月号 同人のうた その3

2012-03-22 23:08:05 | 短歌人同人のうた
ふっくらと母のゆびさきそのままに革手袋の内側の闇
(水谷澄子)

歩み来て水面に映るわが影にピラカンサの実を投げてゆうぐれ
(木曽陽子)

大津波の後に通ひて飲み水をもらひし蛇口に注連を結ひ来ぬ
(阿部凞子)

さりげなくザックの底に忍ばせる末期の水としてのバーボン
(倉益敬)

白湯を飲む二口目にてにんげんの管をおもえり夕冷えの中
(松圭子)

ほんのちよつと指を触れたら成就するスマートフォンの中の出来事
(橧垣宏子)

ひとに押され師走の街をゆきまどふ買ひたきものは何なのでしよう
(高田流子)

我の思いに余る人らの大方は疎遠となりて 雪の降る町
(西勝洋一)

山茶花の垣根を越えて片しぐれ軒の吊しの柿までおよぶ
(川田由布子)

ストーヴにおしりを向けて猫はをりさいはひは常(つね)背後より来る
(小池光)

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短歌人3月号、同人1欄より。