気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2012-03-05 22:17:35 | 朝日歌壇
歌だけを聞かせる時代ありしこと誰に伝えん芦野宏ゆく
(東京都 吉竹純)

街路樹の枝々芽吹きはじめてる雨読三日に飽きて歩けば
(小田原市 浜田信之)

杳(とお)き日のことなど言はぬ名残り雪おとな三人桜餅食む
(長野市 沓掛喜久男)

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一首目。芦野宏は、子供のころテレビで見た記憶がある。上品にお洒落にシャンソンを唄う人だった。四句目の「誰に伝えん」というような歌詞が、そのころの曲にはあったような。おぼろげな記憶だけれど。思えば、芦野宏という名前から、すでにかっこいい。
二首目。作者の住所、小田原市と合わせて読むと、なおしみじみする。小田原で晴耕雨読の暮らしをしておられるのだろうか。最近、こういう何気ない歌に惹かれる。
三首目。三句目の「名残り雪」で場面が転換している。とおき日のことを言わないのは、おとな三人でもあるのだろう。もし「名残り雪」を「なごり雪」とすると、南こうせつの歌を思うので、表記はこれしかない。桜餅というそんなに贅沢でもない季節感のある食べ物が、歌に合っている。