どんな季節も彼の心を満たさないぶらりと両手ばなしの男子
走り出せばあふれるなみだ風に目を、たぶん心も、守ろうとして
(谷村はるか ある冬(自転車通勤))
まつすぐに影の伸びきて自転車の籠にあふるる早春の気は
粛粛とペダル踏みゆく新道の皇帝ひまはり皇帝ダリア
(曽根篤子 前輪後輪)
補助輪を一つはづしてそれつきり十一歳でやめた自転車
ハンドルを任せて風から守られていつもわたしはあなたのうしろ
(真狩浪子 二人乗り自転車)
停めた場所を探してまはる自転車は愛が足りぬと転びてをりぬ
里山に沿うて下る道自転車は都大路を駆くる春駒
(平居久仁子 駐輪場に)
**********************************
短歌人3月号、3月の扉より。今月のお題は「自転車」
谷村さん。少年の切実さのようなものが伝わる歌。彼女自身が永遠の少年少女のように思える。
曽根さん。早春と自転車の取り合わせが良い。爽やか。
真狩さん。どうもご本人は一人では自転車に乗らないらしい。わたしも子育ての数年は乗っていたが、恐くて乗れなくなってしまった。公園のようなところなら乗れそうだが、そこまでどうやって行くかが問題。
平居さん。自転車を春駒と捉えたところが面白い。愛用の自転車は彼女の相棒なのだろう。
走り出せばあふれるなみだ風に目を、たぶん心も、守ろうとして
(谷村はるか ある冬(自転車通勤))
まつすぐに影の伸びきて自転車の籠にあふるる早春の気は
粛粛とペダル踏みゆく新道の皇帝ひまはり皇帝ダリア
(曽根篤子 前輪後輪)
補助輪を一つはづしてそれつきり十一歳でやめた自転車
ハンドルを任せて風から守られていつもわたしはあなたのうしろ
(真狩浪子 二人乗り自転車)
停めた場所を探してまはる自転車は愛が足りぬと転びてをりぬ
里山に沿うて下る道自転車は都大路を駆くる春駒
(平居久仁子 駐輪場に)
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短歌人3月号、3月の扉より。今月のお題は「自転車」
谷村さん。少年の切実さのようなものが伝わる歌。彼女自身が永遠の少年少女のように思える。
曽根さん。早春と自転車の取り合わせが良い。爽やか。
真狩さん。どうもご本人は一人では自転車に乗らないらしい。わたしも子育ての数年は乗っていたが、恐くて乗れなくなってしまった。公園のようなところなら乗れそうだが、そこまでどうやって行くかが問題。
平居さん。自転車を春駒と捉えたところが面白い。愛用の自転車は彼女の相棒なのだろう。