気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2012-03-19 22:12:44 | 朝日歌壇
スクリーンにほくろのように冬の蠅とまって宇宙の旅も終りぬ
(つくば市 内藤英雄)

ウルトラの兄弟たちも年老いてスパリゾートで懐古にひたる
(白井市 毘舎利道弘)

湯あがりの嬰児にふれる柔らかき二歳の兄の手の大きさよ
(いわき市 馬目弘平)

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一首目。スクリーンとあるから映画のことだろう。宇宙の旅と聞くと「2001年宇宙の旅」の映画を思うが、その2001年さえ、もう11年前となってしまった。スクリーンに止まる冬の蠅が、のどかなものに見えて来る。この脱力感が好ましい。
二首目。ウルトラの兄弟は何人いるのか、もう何歳くらいになっているのか。どうでもいいことに思いを馳せるのは、気持ちに余裕のあるときだ。スパリゾートののんびり具合とよく合っている。
三首目。まだ小さい二歳であっても、生まれたての嬰児と呼ばれる赤ちゃんと比べると、かなり大きい。兄弟姉妹の親密感や葛藤を知らない一人っ子の私は、子供たちの気持ちをよくわかってやれないまま、子育てを卒業してしまった気がする。