気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人11月号  十一月の扉

2010-11-15 23:08:17 | 短歌人同人のうた
われに向き椅子のあるなり慕はしき気配をたたへ夜をむきあふ

子を持たぬわれも乗るらむ風の日のサリンジャー忌の回転木馬

(澤志帆 さよならサリンジャー)

寝転びてタバコの煙を見てゐたりこの世のほかに去りゆくものを

手前からぺらんぺらんと夕闇をヘッドライトが剥がしゆくなり

(倉益敬 サマータイム)

収穫はキュウリが五個と茄子が五個その単純を今朝は喜ぶ

老病死左様なことを考える齢(よわい)となるをカラスが笑う

(谷口龍人 いのち)

孤育てと言へばさうかも知れぬ老い日傘くるくる廻しつつゆく

数十台自転車並ぶ売場にて十秒ほどが妙にさみしい

(明石雅子 十秒ほどがさみしい)

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短歌人11月号、十一月の扉から。