気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人11月号  同人1欄  その2

2010-11-18 22:49:04 | 短歌人同人のうた
なにもかもかなはなかつた八月の嘘ばつかりの青空を蹴る
(橘夏生)

秋のけはひ言ひつつそよぐ風草を指さすひとは在りし日の姉
(高田流子)

花嫁の父と呼ばれてタキシード試着してをり略式の父
(大森益雄)

五年後にまた会ひませう古稀祝ふ金券持ちて市役所が来る
(中地俊夫)

茫然と暮れ行く庭をみてゐたり秋明菊ははなひとつ付く
(小池光)

目薬をさして校正続けたり本業、副業、その他のありぬ
(宇田川寛之)

草の陰に猫は入りゆき目を閉ぢぬ八月真昼の人なき時間
(斎藤典子)

決勝戦勝利の選手ら駆け寄れる足元にたつ風も見えたり
(山下柚里子)

いい籤をひいたねといふ夜の道につなぎてゐたる手を解きつつ
(松村洋子)

藍色のあさがおの花ちぢれつつやり直すには遅すぎますか
(佐藤慶子)

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短歌人11月号、同人1欄より

短歌人11月号  同人1欄 その1

2010-11-18 00:37:57 | 短歌人同人のうた
みすずかる秋の信濃は空をゆく雲のふちまでまさびしくあり
(大谷雅彦)

老人を呼びあつめ来る笛吹きが新宿駅のくらがりにゐる
(渡英子)

子を叱りきみを叱りてまだ足りず鰯の頭とん、と落せり
(鶴田伊津)

坂道を上りゆく人下る人重なる一処に暑さきはまる
(渡部崇子)

ゆつくりと母の吐きだす枇杷のたね六道の辻へ転がりゆけり
(杉山春代)

ゆうぐれは神の褒美のごと来たりこけしの眉を撫でいる母に
(川田由布子)

こども靴まばらにそろへ玄関のともしびくらしそろばんの塾
(川本浩美)

濡れ光る散水ホースの内側に巻き取られゆく日常ありき
(水谷澄子)

いつまでも咳こむ夏の陽にむせるしずまるまでの雲の明るさ
(青柳守音)

服部の団地の窓を通過する銀河鉄道月に一、二度
(川島眸)

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短歌人11月号、同人1欄から。