気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2010-11-22 18:17:45 | 朝日歌壇
納豆をかきまぜながら見ておりぬ救出される人人人人
(香川県 藪内眞由美)

ほんのりと昼を灯せる本屋なり立ち読みひとりくすりと笑ふ
(長野県 沓掛喜久男)

じいちゃんも金魚も寂しいやろなあと二ひく一を子が思う秋
(和泉市 星田美紀)

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一首目。チリの落盤事故のあとの救出を詠った作品。このブログでは横書きになってしまうが、縦書きにしたら、人人人人の表記が、まるで納豆がつながってひきあげられる様子に見える。作者の工夫が読みとれる。
二首目。二句目の「昼を灯せる」から、いわゆる「地べた書店」の様子がよくわかる。最近はネットで本を買うようになって、現実の書店に行くことが減ってしまった。元書店員のわたしとしては残念だが、これも時代の流れか。わたしが働いていた書店の仲間はいまごろどうしているだろう。若く優秀な人が入って来て、疲れ果てて辞めていくのを何人も見て来た。書店は過酷な肉体労働だ。作者の沓掛さんの書店はどんな店だろう。
さて、画像は京都の名物地べた書店「三月書房」。ときどきこの店の空気を吸いに行く。今日はこの本だけ買うぞ!(むだ遣いは出来ない)とお金を握って店に入るのだ。
三首目。「二ひく一」からおじいちゃんのお連れ合いが亡くなられたことが想像できる。金魚鉢の金魚も最後の一匹になってしまった。「二ひく一」から物語を読みとれるようにした構成が巧みだ。