気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

秋の果実  山下柚里子  つづき 

2009-12-27 23:40:46 | つれづれ
盆休みの帰省促す子への電話命令のごと懇願のごと

落つるたび点滴液の光るゆゑ身ぬち次第にひかりゆくべし

沈丁花赤むらさきの耳あまた尖らせ風を聞き分けてゐる

極楽の余り風とぞ母言ひき物縫ひてゐる手にあそぶ風

蚊を打ちて開けば三筋くきやかに劇的なること起こらぬ手相

咲く花の気負ひも熱ももたざれば桜紅葉の色のよろしさ

春来るを信ずるものの明るさにクロッカスの芽はやも出揃ふ

(山下柚里子 秋の果実 六花書林)

*****************************

山下さんの歌は自然体で読みやすい。
呼吸器に病気を持っておられて、点滴の歌もあるが、点滴の液で身のうちがひかるという明るい内容。気持ちの持ち方なのだろう。前回引いた歌に、おかめの面の歌があるが、芯のところで良い方向を見ていこうとされているので、読んでいてほっとさせられる。
なお、この歌集の表紙は娘さんが描かれたとのこと。そのことも併せて読むとまた興味深い。