気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

ゆかりのいろの  取違克子  

2009-12-14 20:28:52 | つれづれ
菖蒲田のゆかりの色の濃きうすき 江戸小咄の風が吹きすぐ

ありなしの風にのりつつ蜘蛛の子の織りなすあはき幾何学模様

火箸とふなつかしきもの店先にひさぎてをりぬ島の鍛冶屋は

瑠璃色の玉ころばせて夏の夜を星より生れしマリンバ奏者

こともなく立夏を過ぎて母に送る太陽のしづく能古のみかんを

水色のふるさとの空ひろがれりラムネの蓋をポンとあくれば

人込みをわれに気づかずすれ違ふ夫とは不思議な縁なるかな

バス停の落葉踏みつつ爪先に秋の深さをはかりてゐたり

古伊万里の碗にふつくらほとびゆく睦月吉日(よきひ)のさくら湯のはな

しらうをは春の器に跳ねかへり生きの限りをあはれ玉の緒

(取違克子 ゆかりのいろの 六花書林)

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取違克子さんの第一歌集を読む。
取違さんは、福岡にお住まいで、山埜井喜美枝さんのカルチャーで短歌の勉強をはじめ、「飈」を経て短歌人会に入られた方。
歌は季節感と家族への愛情に溢れ、穏やかで読む者の心を暖かくしてくれる。お会いした記憶はないが、お洒落で上品な作者を想像する。
六首目。ラムネの蓋のポン・・・が明るくて爽やか。
九首目。娘さんの婚礼に関する歌だろうか。読んでいて豊かな気持ちにさせられた。

きのうの朝日歌壇

2009-12-14 00:21:33 | 朝日歌壇
電車つく時刻となれば立読みの生徒ら一斉に駆けだしてゆく
(長野県 沓掛喜久男)

路上にもポインセチアの鉢ならぶ日暮れてあかき駅前花屋
(所沢市 栗山雅臣)

水揚げの魚抓(つか)み手にふりかざしプレゴ(かつた)、プレェゴ(かつた)と島の朝市
(ドイツ 西田リーバウ望東子)

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一首目。電車の待ち時間に書店で立読みしている生徒を迷惑がりながらも暖かく見ている書店員の歌か。携帯電話が普及してから、本の必要なところを携帯で写して盗る輩もいると聞く。思えば、新刊書店で本を買うことが本当に少なくなってしまった。ほとんどはネットか、新古書店か、定期購読で買う。図書館で借りることも多く、リクエストして買っていただくこともしばしば。それでなくても利の薄い地べた書店は、さぞ苦しいだろう。新刊書店は、文化を支えているという書店員の頑張りのみで成り立っているとも言える。
二首目。クリスマスが近づくとポインセチアの鉢植えが花屋の店頭を飾る。日が暮れてもそこだけあかい。季節感に溢れた歌。
三首目。作者はドイツにお住まいなので、プレゴはドイツ語なのだろう。プレゴも動詞とすると、動詞が四つもあるが、それが歌の勢いを出していると思った。
今回は図らずも店屋の歌ばかり選んでしまった。
新聞歌壇には家族詠が多いが、なぜか意味がピンと来ない。私の意識が世間からずれているのだろう。