気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

夕木霊 小泉史昭

2006-10-13 21:06:27 | つれづれ
けふ一日暮れるころほひ発火点まぢかき雲がおほぞらを行く

遠近(をちこち)に夕木霊してカッコウの<生きてゐるか>と呼ぶこゑのする

杜鵑ひとこゑ鳴きしたまゆらを森の静寂(しじま)はそのままに崩(く)ゆ

ひたと打つ黒白の石人生のいづこの辻にわれ迷ひたる

ひとつづつ失せゆくものか欲望は晩秋の森もみぢ明かりす

(小泉史昭 夕木霊 本阿弥書店)

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たまたま手に取った小泉史昭の第二歌集『夕木霊』を読む。
しんとして、中年のさびしさを感じる。作者は1948年生まれ。
人の歌集を読んで、ああ素晴らしいと思うことの幸せ。そして自分が作ることの苦しさ。