その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ロイヤル・オペラ・ハウス 『ロミオとジュリエット』 (グノー作曲)

2010-10-29 23:25:22 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 プロダクションが違うだけで、同じ作品がこうも変わるのかと驚きを禁じ得ない今夜のオペラだった。そして感動的な舞台だった。

 プロダクションは特別な仕掛けは何もないオーソドックスなものだが、14世紀のヴェローナっぽい雰囲気をしっかり伝えていた。2週間前にアムステルダムで見た「ロミオとジュリエット」(こちら→)は、演出にかき回されただけに、今夜はとっても好感が持てた。音楽と歌と演技に集中できる、こういう舞台の方が自分はずっと好きだ。それにしても、プロダクションによってまるで違うオペラ見ているように感じた今夜、改めてプロダクションの影響力の大きさを感じた。

 感動的な舞台の主役はもちろんロミオとジュリエット、そして指揮のダニエル・オーレン(Daniel Oren)とオーケストラの奏でる音楽だった。

 歌は、ロミオ役のピョートル・ベチャラ(Piotr Beczala)がすばらしい。ふくよかで伸びのある声にうっとり。ポーランド人のようだが、イタリア人かと思うほどのイタリアの臭いがプンプンする男だった。第2幕のソロは圧巻。隣のレスラーのようなおじさんが超ドデカブラボーを連発していた。ジュリエット役のニノ・マチャイゼ (Nino Machaidze)は演技が素晴らしかった。1幕の可愛らしい少女から、ロミオとの愛に目覚め、強く大人の女性に成長するジュリエットを見事に演じていた。舞台を見終わって感じたのは今夜のオペラの主題は、二人の悲劇の愛ではなくてジュリエットの成長プロセスかと思った。声量はは大きいものの、ちょっとキンキンしていて一本調子なところもあり、個人的には好みではなかったものの、それを吹き飛ばす演技力だった。

 指揮のDaniel Orenは気持ちの入った熱血指揮ぶりで、重厚な舞台を演出していた。特に、第3幕以降が素晴らしい。コーラス、オーケストラ、独唱陣のコンビネーションが迫力の舞台を作っていた。ラストシーンの二人の熱演は思わず目頭が熱くなる。

 思いの外空席が多い観客席は少し残念だったが、終演後の熱い拍手は満員時と変わらない盛大なものだった。みな、同じような感動の気持ちで一杯だったのだろう。

(Piotr Beczala)


(Nino Machaidze)




(中央がDaniel Oren)




Roméo et Juliette
Friday, October 29

Credits
Composer Charles-François Gounod
Director Nicolas Joël
Revival Director Stephen Barlow
Designs Carlo Tommasi
Lighting design Bruno Boyer

Performers
Conductor Daniel Oren
Roméo Piotr Beczala
Juliette Nino Machaidze
Mercutio Stéphane Degout
Tybalt Alfie Boe
Stéphano Ketevan Kemoklidze
Duke of Verona Simon Neal
Count Paris ZhengZhong Zhou§
Frére Laurent Vitalij Kowaljow
Count Capulet Darren Jeffery
Gertrude Diana Montague
Grégorio James Cleverton

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