その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

石山 恒貴『定年前と定年後の働き方~サードエイジを生きる思考』 (光文社新書、2023)

2024-07-12 07:30:51 | 

 

個人・所属組織の両面において、ドンピシャテーマなので、迷わず手に取った。

アカデミックな研究やケーススタディ、筆者の考察・提言のバランスが取れていて、様々な指摘が腹落ちした。筆者自身も40歳代後半に大きなキャリアチェンジ(会社員→研究者)を経験していて、シニア読者に寄り添う真摯な姿勢が垣間見れて、好印象な一冊である。

いくつか、私が参考になった知見。

・40歳代後半を底に人の幸福感は上がっていくU字カーブを描く(エイジング・パラドックス)

・STT (Socioemotional selectivity theory:社会情動的選択性理論→シニアが自分にとって意義ある目的と親密な人の交流を重視するという理論)とSOC理論(selection optimization with compensation theory:選択最適化補償理論→選択によって目的を特定し、その目的を最適化するための工夫を行い、その際に自分ができないことについては補償していく)の2つが、エイジングパラドックスを説明している

・幸福度が上がるかどうかは、仕事の意味付けの見直し(ジョブ・クラフティング)ができるかどうかが大切。

・筆者のアドバイス:フリーランスを含めたモザイク型就労、越境学習(有給ワーク/家庭ワーク/ギフトワーク/学習ワークの中でアウエイの場にチャレンジ)

・組織は無意識のエイジズムに注意し、対象層へのメッセージを大切する(シニア向けキャリア研修は「たそがれ」研修ではない)

・Pedal(Proactive(やってみる), explore(意味づける), diversity(年下とうまくやる),associate(居場所をつくる), learn (学びを活かす))のフレームワークで自走力を高める

 

本書にあるように、シニアの働き方は一般論は通用せず、個人の価値観や信念次第だ。なので、本書も自分の意思決定や行動にどう活かすかが肝である。さあ、自分はどうするのか?

 

◎目次

はじめに
【第1章】シニアへの見方を変える ── エイジズムの罠
【第2章】幸福感のU字型カーブとエイジング・パラドックス
【第3章】エイジング・パラドックスの理論をヒントに働き方思考法を考える
【第4章】主体的な職務開発のための考え方── ジョブ・クラフティング
【第5章】組織側のシニアへの取り組み
【第6章】シニア労働者の働き方の選択肢
【第7章】シニアへの越境学習のススメ
【第8章】サードエイジを幸福に生きる
おわりに


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする