その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

文句なしの「文科省推薦」映画 「たそがれ清兵衛」(監督:山田洋次、2002)

2021-04-01 07:30:10 | 映画

「寅さん」の山田洋次監督作品であることやタイトルから、のんびりした人情映画を勝手に想像していたが、想定を超えるハラハラ、ドキドキを伴うヒューマンドラマだった。庄内地方の美しい自然・風景など和ませる映像の中、ゆったりとした時間軸で話は進むが、朋江との恋の行方やラストの果し合いシーンなどの緊張感伴うエピソードが上手く配合されている。

印象的だったのは役者たちの好演。真田広之は家族思いの朴訥で誠実だが、実は名剣士である清兵衛を淡々と演じながら、存在感が抜群。朋江役の宮沢りえの美しさや凛とした身のこなしにも息を飲む。そして、ラストの清兵衛の果し合い相手役の田中泯の凄みも半端ない。清兵衛の娘井登役の橋口恵莉奈の純朴さもめんこい。

ストーリー的にはややできすぎ(ありがち)なところも感じたが、家族というテーマ、引き込まれる物語、個性豊かな俳優達、美しい映像など、良質な映画であることは間違いない。

 

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映画《最高の人生の見つけ方》監督:ロブ・ライナー、2007年

2021-03-21 07:30:22 | 映画

余命半年と宣告されたら、残された期間に自分は何をするのだろうか?自分のバケットリスト(「死ぬまでにやりたいリスト」、映画での訳は「棺桶リスト」)には何を入れるだろうか?本編を観ると、きっと誰もが考えさせられる問いだろう。

病院で相部屋となった二人の癌患者がバケットリストをもとに、残された時間を一緒に世界を旅し、最高の人生ラストステージを過ごす物語。途中には、夫々の過去や価値観の違いからの衝突も起こるが、最高の友となって人生の終幕を迎える。珍しさはない展開かもしれないが、よっぽどの天邪鬼でなければ、人生の価値についてしんみり考える良い機会になる。優れたヒューマンドラマだ。

主役の大物俳優ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの二人の存在感が抜群である。ありがちなお涙頂戴映画になってないのはこの二人に負うところが大きい。老人になっても残る男の子供っぽさと、人生の歩みで刻んできた年輪の重みの両方が如何なく表現されている。名優というはこういうものだなと感じ入る。

さて、ペンを持って自分のバケットリストを作ってみようか。

 

監督       ロブ・ライナー

出演       ジャック・ニコルソン, モーガン・フリーマン, ショーン・ヘイズ

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これは超お勧め! 『キンキーブーツ』 松竹ブロードウェイシネマ

2021-03-12 07:30:36 | 映画

イギリスの田舎町で代々続いた家族経営の紳士靴工場が舞台。父の急死で急きょ、社長を継いだ若社長が経営危機で工場閉鎖やむなしに追い込まれる中、ロンドンでのゲイとの出会いをきっかけに、女装趣味男性向きブーツの開発・製造で起死回生の一手を打つというお話。サクセスストーリーというよりも、LGBTQといった自分らしさの発揮という真面目なメッセージが織り込まれている。

ミュージカル版は全曲シンディー・ローパーの作曲ということで一度是非観てみたかった。今回、ブロードウエイのライブ映像を上映するとの情報を得て、二子玉川まで遠征した。

いやー、本当に楽しく、元気がでるミュージカルである。歌よし、役者よし、舞台よし、テンポよし、笑いありで非の打ち所がない、良い意味で完璧に計算されたエンターテイメント。2時間15分があっという間に過ぎてしまった。

主役のローラ役マット・ヘンリーの演技、歌、踊りが素晴らしい。ローラのキャラと組み合わさって、スクリーンからあふれんばかりのオーラだ。ぐいぐい引きつけられる。

私がとりわけ好みだったのは、ローラの女装趣味男性友達たちの踊りや振る舞い。実に、美しいし、身のこなしが洗練されている。映像の良さで、ダンスの時にも(劇場ではおそらくそこまで見えないであろう)指先までもその表現が楽しめる。ため息が出るほどだ。

歌はどれもノリノリで、体が自然に動きだすような音楽ばかり。当たり前だが、その出演者の歌唱も良くて、こりゃあ劇場に居たら凄い盛り上がり間違いなしだ。時折映し出される劇場の観衆たちが羨ましい。ブロードウエイかウエストエンド行きたいなあ~

ミュージカル入門者にも抵抗感なく入れる作品であること間違いないので、万人に自信をもってお勧めしたい。これ見てつまらんと思う人は、きっとLGBTQを「生産性が低い」とか放言する一部の自民党議員ぐらいだろう。

 

【キャスト】

ローラ役:マット・ヘンリー
チャーリー・プライス役:キリアン・ドネリー
ローレン役:ナタリー・マックイーン
ドン役:ショーン・ニーダム
ニコラ役:コーデリア・ファーンワース
ジョージ役:アントニー・リード

【制作】

■脚本:ハーヴェイ・ファイアスタイン
■音楽/作詞:シンディ・ローパー
■演出/振付:ジェリー・ミッチェル
■セットデザイン:デイヴィッド・ロックウェル
■衣装デザイン:グレッグ・バーンズ
■照明デザイン:ケネス・ポズナー
■音響デザイン:ジョン・シヴァース
■ヘアデザイン:ジョシュ・マルケット
■プロデューサー(舞台版):ダリル・ロス ハル・ルフティグ
■監督(シネマ版):ブレット・サリヴァン
■プロデューサー(シネマ版):ダリル・ロス ハル・ルフティグ オースティン・ショウ
■エグゼクティブ・プロデューサー (BroadwayHD):スチュアート・レーン&ボニー・カムリー

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映画 「海街Diary」(監督:是枝裕和)

2021-01-11 07:30:32 | 映画

Amazon Primeにて視聴。私には、是枝監督の作品は「万引き家族」に続いて2作目。

鎌倉に住む三姉妹(幸田幸・佳乃・千佳)が、父の死を契機に腹違いの妹(浅野すず)を向かい入れ、新しく始まった四姉妹の生活を通じて、家族のあり方や地域との交流が描かれる。

物語の中で、登場人物の転機となりうる出来事は起こるものの、どこかにもありそうな日常だ。特に、劇的なフィナーレがあるわけでもない。それでも、視聴後は暖かい気持ちがしっとりと残る良質な日本映画だと思う。

四姉妹を演じる綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの夫々の個性が画面から滲み出ていて存在感が抜群だ。映画の作りも良いが、この作品の輝きはこの四名あってこそだと思う。脇役陣も、樹木希林、大竹しのぶ、風吹ジュン、リリー・フランキー、堤真一等の実力派が固め、安定感に溢れている。

人により好みは分かれるかもしれないが、お勧め映画。

 

監督:是枝裕和
原作:吉田秋生
脚本:是枝裕和

香田幸:綾瀬はるか
香田佳乃:長澤まさみ
香田千佳:夏帆
浅野すず:広瀬すず

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映画 「黄金のアデーレ 名画の帰還」(監督:サイモン・カーティス、2015)

2020-07-04 07:30:00 | 映画

ナチスに奪われたクリムトの名画「黄金のアデーレ」を、絵のモデルであったアデーレの姪に当たる老婦人が、オーストリア政府を相手に返還要求の裁判を起こした物語。実話に基づいている。

私の好きな「美術」「歴史」を題材としながら、「法廷モノ」の要素も加えて適度のエンターテイメント性も持たせた佳作である。見ごたえある一本だ。

マリア・アルトマンを演じた主演女優のヘレン・ミレンの演技が光る。ユダヤ人の上流階級の家に生まれ育ち、高い教養を身に着けたマリアが、アメリカで静かな老後を送りたいと願う一方で、亡き叔母を描いた名画を取り返すために裁判で戦う。難しい立場のマリアをヘレン・ミレンが地に足がついた自然に演じていた。

あえて言えば、テーマの硬さとエンターテイメント性が上手く両立しているとも言えるし、逆にナチスによるユダヤ人の迫害や資産略奪というテーマの重さがやや軽くなっている印象が無くも無い。

映画としての出来は間違いなく良いので、多くの人にお勧めできる一本だ。

 

監督:サイモン・カーティス
製作:デビッド・M・トンプソン クリス・サイキエル
製作総指揮:クリスティーン・ランガン ハーベイ・ワインスタイン ボブ・ワインスタイン サイモン・カーティス ロバート・ワラク
脚本:アレクシ・ケイ・キャンベル
撮影:ロス・エメリー
美術:ジム・クレイ
編集:ピーター・ランバート
音楽:マーティン・フィップス、 ハンス・ジマー

〈キャスト〉
マリア・アルトマン:ヘレン・ミレン
ランドル・シェーンベルク:ライアン・レイノルズ
フベルトゥス・チェルニン:ダニエル・ブリュール
パム・シェーンベルク:ケイティ・ホームズ

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映画 「すべての政府は嘘をつく」(監督:フレッド・ピーボディ、2016)

2020-06-21 07:30:00 | 映画

アマゾンから視聴履歴に基づいて勧められるままに観たドキュメンタリー映画。

「世の中変わったよな」と心底思うのは、このタイトルを20年前に目にしたら「どんなスクープ映画なのだろう」と興味津々に引き込まれたかもしれないが、今接すると「そんなの当たり前でしょ。何をいまさら」と思ってしまうことだ。政治の劣化は、日本をはじめとして今や全世界現象だと思う。

本作品は、アメリカの独立系ジャーナリストであったI・F・ストーンの功績を回顧するとともに、現代の独立系メディアの動きを紹介するドキュメンタリー映画。いかにアメリカ政府や大資本メディアが嘘をつき、真実を語らないできたかの具体的事例として、ベトナム戦争の本格介入のきっかけとなったトンキン湾事件、ニクソン大統領の辞任の切り札となったウォーターゲート事件、イラク戦争、大統領選挙における候補者の言動、メキシコ人移民の大量死などが取り上げられる。

今の世の中、これらの映像を見て今更驚くことはない。アメリカの状況は殆ど日本にも当てはまるし、今回のコロナへの対応を見ても、事実と意見と推測と政策がごちゃまぜになって、本当に何が起こっているのかは絶妙に隠されている(もっともコロナの場合は、政府も事実をつかみ切れてないようなところもあったが)。

I・F・ストーンという独立系凄腕ジャーナリストがいたことや、国境を越えてやってくる多くのメキシコ人移民者が途中で息絶えてしまうというような事実を除いては、個人的にはあまり新しい情報は無かったが、米国現代史の振り返りに良い。我々、一般ピープルはどうしたら騙されずに済むのか、それが一番気になった。

 

監督:フレッド・ピーボディ
製作:ピーター・レイモント アンドリュー・マンガー スティーブ・オード
製作総指揮:ピーター・レイモント オリバー・ストーン ジェフ・コーエン スティーブ・オード

出演:
ノーム・チョムスキー
マイケル・ムーア
エイミー・グッドマン
カール・バーンスタイン

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映画 「スターリンの葬送狂騒曲」(監督:アーマンド・イアヌッチ、2017)

2020-06-13 07:30:00 | 映画

何とも言い難い、苦い後味が残る映画である。原題はDeath of Stalin(邦題はなかなかうまく訳したと思う)。スターリン死の直前から、その死、そして死後の跡目争いが描かれる。コメディ・ジャンルに分類されていたのだが、ブラック・コメディもここまでくると背筋が寒くなる。

スターリンの粛清の描写が恐ろしい。スターリンの機嫌を損ねることを怯える人、メニューの料理を選ぶかのようにリストから指名される処刑者、問答無用で連れ去られるリストから選ばれた市民。コメディタッチに描かれているとは言え、こうした世界が70年前に存在していたと思うと恐ろしい。

側近たちの後継者争いの駆け引き、策謀も凄まじい。コミカルには描かれているが、現実には生死をかけたギリギリの権力闘争が展開されていたこと容易に想像できる。近づきたくもない世界だ。

好き嫌いは分かれる映画だし、気分が晴れたり、元気になる映画でもないが、見て損はない。細かい史実との相違は少なからずあるようだが、時代の雰囲気を知るには良いと思うし、独裁者の世界や非自由社会に戻ることがあってはならないというのが分かるだけでも良い。

 

監督:アーマンド・イアヌッチ
製作:ヤン・ゼヌー ローラン・ゼトゥンヌ
製作総指揮:ケビン・ローダー
原作:ファビアン・ニュリ
脚本:アーマンド・イアヌッチ デビッド・シュナイダー イアン・マーティン ピーター・フェローズ
撮影:ザック・ニコルソン
美術:クリスティーナ・カサリ

キャスト

フルシチョフ:スティーブ・ブシェーミ
ベリヤ:サイモン・ラッセル・ビール
マレンコフ:ジェフリー・タンバー
モロトフ:マイケル・ペイリン
ミコヤン:ポール・ホワイトハウス
ジューコフ:ジェイソン・アイザックス
スヴェトラーナ:アンドレア・ライズボロー
ワシーリール:パート・フレンド
アンドレーエフパ:ディ・コンシダイン
マリヤ:オルガ・キュリレンコ
スターリン:アドリアン・マクローリン
カガノービチダー:モット・クロウリー
ブルガーニン:ポール・チャヒディ

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映画 「しゃべれども しゃべれども」(監督:平山秀幸、2007)

2020-06-06 07:30:00 | 映画

ひょんなきっかけで話し方教室を開くことになった落語家の卵とその弟子たち(女子大生、小学生、元プロ野球選手)との交流を描いたドラマ。家人が原作を読んでとっても良かったという話を聞いて、映画を視聴。

落語家の日々を描いた映画としては、この数年では「の・ようなも のようなもの」を見たが、ゆるい、まったりとした雰囲気の物語進行や映像がとっても似ている。全く肩の凝らない、脱力系の映画で、刺激を避けてリラックスしたい1日にぴったりだ。

登場人物の夫々が落語を通じて自分をストレッチさせ成長していく様子が、押しつけがましくなく自然に描写されているのは好感が持てる。また、小学生の弟子役である森永悠希の関西弁と溌溂した演技は、淡々とした映像にアクセントを与えていた。

人によって好き嫌いは分かれるかもしれないが、ほっこりした気分に浸れるのは間違いない。

監督:平山秀幸
製作総指揮:豊島雅郎 藤島ジュリーK. 奥田誠治 田島一昌 渡辺純一
製作:渡辺敦 小川真司

今昔亭三つ葉(外山達也):国分太一
十河五月:香里奈
村林優:森永悠希
湯河原太一:松重豊
外山春子:八千草薫
今昔亭小三文:伊東四朗

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映画 「万引き家族」(監督:是枝裕和、2018年)

2020-05-28 07:30:00 | 映画

遅まきながら是枝監督のカンヌ映画祭の最高賞であるパルムドール受賞作『万引き家族』を見る。血縁関係のない大人、子供が一緒に暮らす「家族」を通じて、現代社会の貧困や児童虐待を描いた作品。貧困、家族、愛について考えさせる直球の社会ドラマだ。

非常に良くできた映画であることは間違いない。貧困を社会構造要因のみに求めるわけでないし、貧困ゆえの万引きを正当化するような単純な物語でも無く、「血を超えた親子の愛」というようなステレオタイプな感動の押しつけでもない。人間の卑しさも含め、問題の難しさをそのままに描いている作品だと感心した。

また、「家族」の役者たちの演技が素晴らしく、まるで現実を追ったドキューメンタリーのようなリアルさがある。特に、安藤サクラの演技は迫真で、胸が締め付けられる。リリー・フランキーのダメ親父もどっかにいそうだし、樹木希林のしぐさ一つで語る動き、存在感は流石。松岡茉優の自然体の演技も上手く嵌っている(加えて、何しろ可愛い!)。子役の二人も、大人の大俳優達を前に一歩も引いていない。観ながら、感心しっぱなしだった。こうした演技を引き出した是枝監督の手腕もあるのだろう。

ただ、作品そのものの素晴らしさとは別に、個人的には嗜好のストライクゾーンからは外れていたのは事実である。う~ん、これはなぜだが良く分からない。不思議に感情移入できなかったところはあった。

好き嫌いは人により分かれるかもしれないが、一見の価値は十分にある。そして、好みでは無かったと言っているこの私も、視聴後のずっしりと重く深い感慨が去るには、随分と時間がかかった。

 

監督・脚本:是枝裕和

キャスト

リリー・フランキー:治
安藤サクラ:信代
樹木希林:初枝
松岡茉優:亜紀
城桧吏:祥太
佐々木みゆ:ゆり

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ジ・オフィス/ the office  (シーズン1、2)

2020-05-21 07:30:00 | 映画

アマゾンプライム会員の人は、是非、一話で良いので見て欲しい。私が勝手に思うこれぞイギリス(?)のシチュエーション・コメディです。

2001年の放映なのでもう20年も前の作品なのですが、当時イギリスでは大旋風を巻き起こしたらしいです。アメリカでリメーク版が制作されていて、それを飛行機の中で見たことがあるのですが、ツイッターで脳学者の茂木健一郎さんがイギリスのオリジナル版を絶賛お勧めしていました。そんなこともあり、コロナ騒動のStay Homeを活用して見始めたら、シーズン1,2の12話を一気に見てしまいました。

ロンドン近郊のスラウ(ロンドン駐在中に仕事で何度か訪れたことありますが、イメージは首都圏で言えば、八王子、川口、昔の川崎といったイメージかな?)にある紙の卸会社が舞台です。ドラマは、そこの「史上最低の」マネジャー、デイビッドとこちらもあまりいけてない部下社員たちの職場風景を淡々とドキュメンタリー風に追った作りになっています。

この作品の面白さを説明するのは、ちょっと私の表現力では難しいです。ですが、デイビッドのとんでもなさは、「いたいた、こういう管理者!」と思うところもあるし、「流石にこんな管理者いないだろう」とあきれるところありですが、地なのか演技なのか、わからないリッキー・ジャーヴェイスの「怪演」が神がかっています。

また、社員たちの呆れた言動ややりとりもリアリティと非現実性がスレスレで絶妙のバランスです。ここまで緊張感無い職場では無かったですが、私が務めていたオフィスにも通じた緩い雰囲気はあって「あるある」の連続でした。

ジョークはかなりブラックだし、(イギリスのテレビではあまり珍しくなかった気がしますが)今の日本なら完全アウトでしょというようなハラスメント、差別発言も満載なので、不快に思う人もいるでしょうし、合わない人には全く受け付けられないコメディだと思います。なので、まずとりあえず一話を見て頂ければと思います。宜しければ、感想教えてください。

 

(出演)

リッキー・ジャーヴェイス

マーティン・フリーマン

ルーシー・デイヴィス

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映画 『日々是好日』(監督:大森立嗣、2018)

2020-05-11 07:30:00 | 映画

茶道を題材に、日本の文化、自然、人についての奥深さ、豊かさ、繊細さを約100分の映像の中に凝縮させた佳作です。

アマゾンプライムにあったので視聴したのですが、コロナウイルス感染防止のため普段と異なった毎日を余儀なくされている今の日本人にぴったりの作品でした。私にとって、「日常」「人生」「音」を振り返る機会となりましたし、見る人それぞれの気づきが得られる作品だと思います。

茶道の師匠役である樹木希林と弟子役である黒木華の地に足に着いた演技が、落ち着いた映像にピタリと嵌り素晴らしいです。映画には茶道の所作が映されたり語られる場面がいくつか出てきますが、この二人には茶道に通じた役者としての所作を感じます。

映画の終盤、新年のお茶会で弟子たちを前に、師匠の武田先生(樹木)がこう言います。
「またこうして初釜がやって来て、まあ毎年毎年同じことの繰り返しなんですけれども、・・・こうして同じことができるってことが本当に幸せなんだなあって・・・」
この台詞の意味を噛みしめることができるのも今ならではです。

 

スタッフ・キャスト

監督:大森立嗣
原作:森下典子
脚本:大森立嗣

典子:黒木華
武田先生:樹木希林
美智子:多部未華子
雪野:鶴田真由
典子の父:鶴見辰吾

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三谷幸喜 監督・脚本 「short cut」 (2011)

2020-04-25 07:30:00 | 映画

三谷幸喜監督・脚本によるWOWOW向けのテレビ用コメディ映画。コロナウイルス感染予防は笑いに限るということで、三谷作品をアマゾン・プライムで検索。

共働きで仕事優先でやってきた中年夫婦のすれ違いや相互の再認識を、人里離れた林間の彷徨の中でロードムービー風に描く。ストーリー的には、私にも思い当たることばかりで、笑うに笑えない会話が冷や汗ものだが、脚本としてよくできていることは間違いない。

ワンシーン、ワンカットで2時間実況生中継風の作りなので、リアリティが半端でない。一方で、林間の移動をワンカットで追い続けるのはそのカメラ技術が凄いのは手に取るように分かるが、観る方も結構疲れる。ストーリーや映像の引き込む力が半端なく、あっという間に2時間が経つ。

芝居としては、殆ど、中井貴一と鈴木京香の二人芝居。実力派の二人の俳優による(きっと)アドリブも含んだやりとりは絶妙。2時間ワンシーン・ワンカットで、よくもまあ、演じ続けることができるものだとひたすら感心する。

三谷作品は外れが無い。お勧めです。

 

出演
中井貴一
鈴木京香
梶原善

監督・脚本: 三谷幸喜

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映画 「日本の一番長い日」(監督:原田眞人、2015年)

2020-04-15 07:30:00 | 映画

コロナウイルス感染防止のStay Homeで、読書や映像を見る時間が増えている。何年か前に半藤利一氏の原作を読んだ『日本のいちばん長い日』の映画版を視聴した。

原作は、1945年8月14日から終戦日の15日正午まで、陸軍青年将校のクーデータ宮城事件を中心に記述されているが、本映画は終戦において中心的役割を果たした鈴木貫太郎首相と阿波惟幾陸軍大臣の二人を中心に終戦に至るドラマが描かれる。

テンポよく緊張感ある展開で、2時間を超える作品だが、あっという間だった。鈴木総理を演じる山崎努と阿南陸相を演じる役所広司が実力俳優ならではの存在感を発揮している。

一方で、私は原作読んでいたのでどの役者が誰を演じているか分かったが、原作読んでない人は、テンポが速く人物紹介の字幕もないので、鈴木と阿南はともかく青年将校たちは誰が誰だかわからないのではないか。できれば、原作読んでから視聴されることをお勧めしたい。

個人的な印象としては、名演ではあるものの役所が演じる阿南陸相がちょっと「いい人」過ぎる感じがした。あの歴史的局面を終戦まで持って行けたのは、阿南陸相のリーダーとしての力量が大いに寄与していることは間違いなく、原作に描かれた修羅場における苦悩やディレンマは相当だったと思うのだが、映画の数時間でそこまで描き切るのは難しかったようだ。

それにしても、この国としての決断があと半年、いや1年早くできれば、犠牲者はもっと少なかったのにという思いは残る。国家、組織、人の器、プライド、リーダーシップ、家族など、いろんな角度での見方ができる。一人でも多くの日本人に観てほしい作品であることは間違いない。

 

監督:原田眞人 
原作:半藤一利 
脚本:原田眞人 
製作総指揮:迫本淳一 
エグゼクティブプロデューサー:関根真吾 豊島雅郎 
プロデューサー:榎望 新垣弘隆 
撮影:柴主高秀 
照明:宮西孝明 
録音:照井康政 
衣装:宮本まさ江 
美術:原田哲男 
編集:原田遊人 
音楽:富貴晴美 

阿南惟幾:役所広司 
昭和天皇:本木雅弘 
畑中健二:松坂桃李 
迫水久常:堤真一 
鈴木貫太郎:山崎努 
阿南綾子:神野三鈴 

 

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三谷幸喜 監督 「大空港 2013」

2020-04-02 07:30:00 | 映画

 コロナウイルスで沈んだ気分を笑い飛ばすに最適の一本。三谷幸喜が脚本・監督し、三谷作品らしい軽快なコメディに仕上げっている。

 天候不良で松本空港に羽田行きの飛行機が緊急着陸。地方の空港で一時を過ごす乗客たちの騒動が、グランドスタッフ(竹内結子)を軸に描かれる。

 ワンシーン・ワンカットで撮られているので、リアリティや臨場感がたっぷり。俳優さんの緊張感も相当なものだと想像するが、竹内結子、香川照之、神野三鈴、生瀬勝久などの個性派俳優を揃えて、安心して楽しめる作品。105分、息をつかせず話が展開していく。

 週末、家に籠ったときに見るのがあう。もとはWOWOWで作ったテレビ映画らしいが、今はAmazonプライムで見られます。


監督 三谷幸喜 
プロデューサー 徳田雄久 藤田知久 椿宜和 
ラインプロデューサー 森賢正 稲葉尚人 
脚本 三谷幸喜 
撮影 山本英夫 
照明 小野晃

大河内千草 - 竹内結子
田野倉守男 - 香川照之
田野倉美代子 - 神野三鈴
田野倉真弓 - 石橋杏奈
田野倉睦夫 - 池松壮亮
鶴橋蔵之介 - 生瀬勝久
鶴橋清正 - 綾田俊樹
村木繁 - 甲本雅裕
砂田かおる - 青木さやか
国木田修 - オダギリジョー

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映画 「私はダニエル・ブレイク」(監督 ケン・ローチ、2017年)

2020-03-24 07:30:00 | 映画

イギリスの心臓疾患のため仕事の大工ができなくなり失業給付を求める60歳代の男性と公共住宅に引っ越してきたシングルマザーと二人の子供の家族との交流を通じて、イギリスの普通の市民の貧困を描いたドラマ。社会派で有名なケン・ローチ監督の作品で、2016年に第69回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドール、2017年に英国アカデミー賞で英国作品賞 (2017)を受賞している。

 ワーキングクラスとして普通に仕事をしてきても、健康を害して仕事を続けられなくなった時には、日々の生活が立ち行かなくなる。不幸な結婚の解消と同時に、子どもを抱えて路頭に迷う。怠けていたわけでもなければ、贅沢をしたわけでもない。たまたま巡ってきた運命や環境で、人としての生きる権利や尊厳までが侵される。重くのしかかる現代社会の矛盾が表現されている。主人公のダニエル・ブレイクを演じたデイヴ・ジョーンズの深みのある演技、シングル・マザーのケイティ役、ヘイリー・スクワイアーズの自然体な演技が、リアリティを高めている。

 この映画を観て「貧困は自己責任」と言い切れる人がいるのだろうか。もちろん、国、市町村の福祉にただ乗り、悪乗りしている人を私も見てきているし、世の中には働けるのに働いてない人も存在するだろう。だが、自己責任で片付けられない貧困は確実に存在し、そうした人には一定の支援が必要なはずだ。

 私は未見だが、日本の「万引き家族」、韓国の「パラサイト」など貧困を描いた映画が各国で製作され、評価されているのは、先進国と言われる国においても貧困が課題であることを示しているのだろう。

(最近は日本も同じだが・・・)イギリスのつながらないコールセンターやお役所仕事はロンドンで十分に経験したので、肌感覚としても良く分かる。イングランドの北東部の薄暗い街並み、寒い気候が、厳しい環境を際立たせる。掛け値なしにいい映画だが、明るい展望が見える映画ではないので、観るタイミングは選んだ方が良いと思う。

余談だが、原題は"I, Daniel Blake"。観て頂ければわかるが、邦題は訳としては間違ってないが、ちょっと映画や原題のイメージとは違う。

 

監督:ケン・ローチ
製作:レベッカ・オブライエン
製作総指揮:パスカル・コーシュトゥー グレゴワール・ソルラ バンサン・マラバル
脚本:ポール・ラバーティ
撮影:ロビー・ライアン
美術:ファーガス・クレッグ リンダ・ウィルソン
衣装:ジョアンヌ・スレイター
編集:ジョナサン・モリス
音楽:ジョージ・フェントン

ダニエル・ブレイク:デイブ・ジョーンズ
ケイティ:ヘイリー・スクワイアーズ
ディラン:ディラン・フィリップ・マキアナン
デイジー:ブリアナ・シャン
アン:ケイト・ラッター
シェイラ:シャロン・パーシー
チャイナ:ケマ・シカウズウェ

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