4月パーヴォ月間のBプログラムは、都合により1日目に振替え。前週よりも更にパーヴォらしさがふんだんに発揮されたプログラムで、目が眩むほどエキサイティングな音楽体験となった。ストラヴィンスキーの「ペトルーシカ」、ブリテンのピアノ協奏曲、プロコフィエフの「3つのオレンジへの恋」、いずれもリズムや音の情景が目まぐるしく変化し、色彩も豊か。パーヴォとN響は、切れのあるシャープな演奏を展開し、個人的には今年のN響定期演奏会の中でもトップクラスの満足度だった。
前半は、プログラムのラストに持ってきてもいい「ペトルーシカ」で、1回表からフルスロットでスタート。ここ数年では、N響で山田和樹、鈴木パパで聴いている。謝肉祭の雑踏の中に入り込んだようなエネルギーに溢れた音楽が大好き。きびきびとメリハリの利いたパーヴォの棒に、N響が平然とついていく(ように見える)様に舌を巻く。ピアノは松田華音がオーケストラの中央(指揮者の目の前)で演奏。オーケストラと一体となった演奏だった。
ブリテンのピアノ協奏曲は全く初めて聴く曲。決してとっつきやすい音楽ではないが、こちらも第1楽章の活気あふれる音楽から第2楽章の陰鬱な雰囲気も伴う漂うワルツなど、変化に富む。ピアノ独奏のベンジャミン・グローヴナーは高速で手が動き(私の席からは指までは見えない)、スピード感一杯にピアノの音が弾ける。ステージ奥のP席では正直ピアノの音の詳細は良く分からないのだが、相当のテクニックが求められそうなこの曲を難なく弾きこなした。
ラストの「3つのオレンジへの恋」はこの日の演奏曲としては一番短いが、管弦打楽器がそれぞれの力を見せつけ、オーケストラが爆発。プロコフィエフらしい活気あるリズムとオケの爆音が組み合わさって、圧倒的な演奏だった。「戦争」では斜め前のおじさんが気持ちよさそうにエア指揮を展開していたのが気になった(何故か私の前の列は5席程度が空席で指揮スペースたっぷり)が、振りたくなる気持ちは理解。
終演後の会場の拍手は私の興奮度からするとやや控えめな印象で意外だった。私の両隣りの方も、冷静な拍手を送っていた。ただ、オケ解散後も粘り強く拍手を続けるお客に引っ張られるように、拍手を再開する人も増え、最後はささやかな一般参賀も実現。最近、一般参賀が習慣化しているのは鼻白むところもあるが、こんな素晴らしい演奏こそソロコールがふさわしいと思ったので、私としても嬉しい限りだった。
パーヴォは間違いなくN響から彼ならではの音を引き出してくれる指揮者だ。返す返す来シーズンのラインナップにパーヴォの名前が無いのが残念。
第2035回 定期公演 Bプログラム
2025年4月18日 (金) 開演 7:00pm
サントリーホール
曲目
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「ペトルーシカ」(全曲/1947年版)
ブリテン/ピアノ協奏曲 作品13
プロコフィエフ/交響組曲「3つのオレンジへの恋」作品33bis
指揮 : パーヴォ・ヤルヴィ
ピアノ : ベンジャミン・グローヴナー(ブリテン)
ピアノ : 松田華音(ストラヴィンスキー)
Subscription Concerts 2024-2025Program B
No. 2035 Subscription (Program B)
Thursday, April 17, 2025 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]
Suntory Hall
Program
Stravinsky / Petrushka, burlesque in 4 scenes (Complete, 1947 Version)
Britten / Piano Concerto Op. 13
Prokofiev / The Love for Three Oranges, symphonic suite Op. 33bis
Conductor Paavo Järvi
Piano Benjamin Grosvenor (Britten)
Piano Kanon Matsuda (Stravinsky)