「寅さん」の山田洋次監督作品であることやタイトルから、のんびりした人情映画を勝手に想像していたが、想定を超えるハラハラ、ドキドキを伴うヒューマンドラマだった。庄内地方の美しい自然・風景など和ませる映像の中、ゆったりとした時間軸で話は進むが、朋江との恋の行方やラストの果し合いシーンなどの緊張感伴うエピソードが上手く配合されている。
印象的だったのは役者たちの好演。真田広之は家族思いの朴訥で誠実だが、実は名剣士である清兵衛を淡々と演じながら、存在感が抜群。朋江役の宮沢りえの美しさや凛とした身のこなしにも息を飲む。そして、ラストの清兵衛の果し合い相手役の田中泯の凄みも半端ない。清兵衛の娘井登役の橋口恵莉奈の純朴さもめんこい。
ストーリー的にはややできすぎ(ありがち)なところも感じたが、家族というテーマ、引き込まれる物語、個性豊かな俳優達、美しい映像など、良質な映画であることは間違いない。