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その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

さようなら俳優座劇場 最終公演 W・シェイクスピア<嵐 THE TEMPEST>(演出:小笠原響、翻訳:小田島創志)

2025-04-12 07:24:27 | ミュージカル、演劇

この4月で閉館となる俳優座劇場の最終公演「嵐 THE TEMPEST」を観劇(初日)。

もっとも、私が初めてこの劇場を訪れたのは、昨年の11月。狭めのホワイエやパブの併設など、劇場の雰囲気がロンドンの劇場を思わせるところが多々あって懐かしく喜んでいたら、既に閉館が予定されているとのことだった。せっかくこんな素敵な劇場を知ったのに、何とも残念。今回が2回目にして、最終の訪問になる。

新劇界の草分け的なこの劇場の最終公演のためか、業界関係者の方や熱心な演劇ファンが多数来場しているようで、会場でばったり会ったあいさつ会話がいくつも聞こえてくる。皆さん、様々な想いを持って訪れているためか、観客席も独特の雰囲気が漂っている気がした。

演目はシェイクスピアの「嵐(テンペスト)」。長い歴史を持つこの劇場でも初めての演目とのことだ。シェイクスピアの最後の演目と言われる本作を、最初で最後の演目に選んだのも劇場としての思いが籠められているのだろう。演出は小笠原響、翻訳は小田島創志(シェイクスピアの翻訳で有名な小田島雄志の孫)。このコンビは昨年せんがわ劇場で「ドクターズジレンマ」を観たが、テンポや作りがとっても良かったので期待も膨らむ。

上演のほうは、初日ということもあり多少の台詞まわしにこなれない感じられるところはあったが、最終公演・初日ならではの熱量を感じる舞台だった。物語の中心となるプロスペロー役の外山誠二はベテランの味を発揮して、安定の演技で舞台の軸がしっかり。他の役者もとても充実。私が特に印象的だったのは、エアリエルを演じた平体まひろ。初めて知った女優さんだが、柔らかい身のこなし、表情、美しい歌唱らが、妖精感たっぷり。孤島という環境の中の不思議な生命体を体現していた。小柄でチャーミングなところも役柄に合っていて目が離せなかった。

大がかりな舞台装置は無いが、必要十分に感じる。ニンフたちの踊りは美しく、幻想的な雰囲気つくりでとっても好み。翻訳については、多の訳と比べてないので違いは良く分からないが、シェイクスピア劇でしばしば遭遇する言葉の洪水に飲みこまれることはなく、自然な会話がやりとりされ、舞台への投入感が高まった。この作品の良さが自然に引き出せれた演出・台本だったと感じた。

無料で配布されたプログラムには、出演者たちの劇場への思いがつづられていて、劇場という「場」の重要性、多様性が感じられた。終幕後の拍手や出演者の返礼も、いろんな思いを負っての役者と観客のコミュニケーションであった。上演への満足感と幕を閉じる劇場の寂しさの両方を抱えて、帰路に就いた。

 

2025年4月10日(木)18:30
俳優座劇場

作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:小田島創志
演出:小笠原 響

出演
外山誠二/浅野雅博/あんどうさくら/平体まひろ
藤原章寛/藤田宗久/金子由之/田中孝宗/里村孝雄
千賀功嗣/前田聖太/上杉陽一/岩崎正寛/八柳 豪
荒木真有美/安藤 瞳/井口恭子
稀乃/山崎稚葉/あり紗/長井優希/安藤春菜/蟹澤麗羅

 


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