バイユー ゲイト 不定期日刊『南風』

ブルース、ソウルにニューオーリンズ!ソウルフルな音楽溢れる東京武蔵野の音楽呑み屋バイユーゲイトにまつわる日々のつれづれを

From Katrina to Super Bowl Champs, this is our story.

2010-05-21 | 音楽

昨夜もよく聴きました。引き続きスーザン・カウシルの新作のお話。
上の英文はアルバムのブックレットの冒頭に書かれている一文です。Super Bowl Champsとは「(そんなことが起きたら)ニューオーリンズに雪が降る」とさえ歌われたニューオーリンズ・セインツの奇跡のスーパーボウル制覇を指してのこと。
2行目にはDedicated to our Crescent City(ニューオーリンズのことですね) & our dear friends…と。。。
そしてその後にはIn loving memoryとあり、共にファミリー・グループ『THE COWSILLS』で活躍した二人の兄の名前が記されております。
60年代半ば過ぎあたりには日本でも高い知名度を誇った家族バンド『カウシルズ』。僕は恥ずかしながら名前を聞いたことがあるくらいだったのですが、数年前ベースプレイヤーのMさんに聴かせていただきそのポップで切なく、それでいて胸躍らせるメロディとサウンドをすっかり気に入ってしまっていました。今やほとんど語られることもなくなってしまった『カウシルズ』ですが、大橋巨泉の「牛も知ってるカウシルズ」というコピー?は今もネットで検索すると幾つかヒットしたりして過去の知名度の高さを物語ります。

そんなカウシルズの女の子(本当に子どもだった)ボーカルとしてフィンガー5でいえばアキラのようなポジション?にいたスーザン。彼女は今も移り住んだニューオーリンズで音楽活動を続けているのです。
Susan_cowsill_offbeat ところで!今回知ったのですがスーザンは一昨年に夫でドラマーのラス・ブルサードと共に来日し演奏も行っていました!!これは『日本ペンクラブ』というところが主催する世界P.E.N.フォーラム『災害と文学』という国内外から、災害を(体験し)取上げた、作家やアーティストたちが多く参加した催しの為の来日でコンサートではなかったようなのですがどうやらスーザンはしっかり演奏をして帰ったようです。(これはカウシルズ愛好家のMさんもご存知ありませんでした。)このフォーラムへの参加からもわかるように彼女にとってハリケーン・カトリーナというのは当然ながらあまりに大きな体験であったのです。

アルバムブックレットに In loving memoryと記された二人の兄のうちバリーはスーザンと同じくニューオーリンズに移り住んでおり、カトリーナで自宅が水没し命を落としました。もうひとりの兄ビリーも翌年病気で亡くなっています。

カトリーナ後にリリースされたニューオーリンズのミュージシャン達の作品には、直接的かどうかはともかくとしてあの未曾有の災害を経たことによるなんらかの色が隠せませんでした。
多くの印象的な作品がリリースされ、もう一通り出きたかなと思ったところに届けられた本作。5年の月日を経て、丁寧に作り上げられた味わい深く、そして強い作品になっています。嘆き、怒りではなく想いを慈しむ感情、そして内面的な強さを持った手触り。じっくり聴き込める作品です。女性シンガーソングライターによるルーツロック、という音作りなので実際の共通点はないのですが、僕は最初に聴いてアーマ・トーマスの『After the Rain』を思い出しました。

…声高ではなく「いいですよ」とお薦めいたします。

Susancowsill_lmf ※故バリーさん作の『River of Love』にはカウシル兄弟がコーラスで集結。カウシルズ愛好家の方にもお薦めします。