『Pull Up Some Dust and Sit Down/Ry Cooder』巷で話題のライ・クーダー久しぶり(3年振り)の新作です。
1987年の傑作『Get Rhythm』以降、サントラや企画モノで成功を収め20年もの間ソロアルバムをリリースしなくなっていた彼ですが2007年から再びソロアルバムを作るようになっています(2005年作も含む?)。
でもなんとなく消化不良だったという方も多いのではないでしょうか。
良いんだけど物足りないような。そんな往年の、パラダイス&ランチやチキンスキンを今でも愛聴しているファンには(笑)待望の新作です。
まさに「みんなの聴きたかったライ・クーダー」。
ピーター・バラカンさんによると本作は「怒りのライ・クーダー」という程にプロテストな内容で。社会問題、環境問題に鋭く切り込んだ作品です。といっても激しく感情的な音楽が奏でられるというわけでは決してなく。ファンの待っていた演奏が詰まっています。本作の批評性、レベルミュージック感は彼の愛してやまないカリプソのように一見いたってのどかな表情をしています。歌詞は辛辣でもね。
ゴスペル風のコーラス隊が、フラコのアコーディオンがライの「あの」エレキギターが!「こんなの待ってたでしょ?」なアルバムです。そうそう、印象的というか驚くのがジョンリー・フッカーそっくりの弾き語りを聴かせる曲が収録されています。コレが凄いのなんの。名手ライさん、そっくりに弾くのはあまり驚きませんが歌唱の劇似度といったら!!「え?これってサンプリング??」と思ったほどです。声、節回し、息づかい、譜割り感覚。白人、いや他人が歌ってるとは到底思えません。
個人的には演奏、内容共に大満足。もう少し短ければ更に良かったです。「最近のライ・クーダーねえ…」という方には特にお薦めします。