9700を越えたくらいから、ああもうすぐ10000だなぁと思っていましたが…いや、なんとなく嬉しいものです!!
覗いて下さった皆様、バイユーに足を運んで下さった皆様に感謝いたします。
ありがとうございます。そしてこれからもよろしく。
(続きです)試合は~ポンサックレック選手、流石に素晴らしい王者でした。バランスの良さは内藤選手にペースを乱されたこの夜でさえも一流だなと思った。内藤選手はこのどっしりとしたチャンピオンに対して、勇気を持って大きなフックを1発でなくそのまま返しで放ち(時には3発)肉薄した。その時もきっちりと相手のパンチへの注意は怠らず一見ラフなパンチとおおぶりなフェイントを取り混ぜながら丁寧にペースを崩しにかかっているように見えた。接近距離でのあの左右とりまぜたフェイント、そこからの大きなパンチ(それ自体がフェイントの時もあったのかも)。それはショートのストレートもアッパーも打てる名王者の前で行うのはなかなかに勇気のいる行為だと思った。冷静に丁寧に戦う姿に感銘を受けた。…なのにビッグパンチがあたる予感までは容易に漂わない。そんな中でコツコツとペースを崩しポイントを奪っていった。気持ちが切れそうな瞬間もあったのかもしれない、それくらいタフな12Rだった。気力で戦った、というより気力で気持ちを切らさずに戦い切った。プロフェッショナルだったと思う。
今更だけど、なんでもライヴというのは特別だ。特にボクシングはテレビがなかなか会場の空気感を伝えられない競技だ。カメラに映らないところが多すぎる。かつては高橋ナオト選手とマーク堀越選手の名勝負の決着のシーン。その時カメラはなぜか顔のアップを捉えていてKOの瞬間は映像として残されなかった。高橋選手が一瞬ガードを下げ気味のフェイントを…と思った次の瞬間にカメラが慌てて引いた時にはマーク選手は倒れていた。辰吉選手が最初に世界タイトルを奪ったリチャードソン戦、チャンピオンがラウンド開始のゴングに応じずギブアップしたシーンは映像に残ることはなかった。辰吉選手が猛攻をしかけたあのラウンド、テレビの映像ではゴングが鳴っているのに激しく攻めたてたかのように映っているが実際はまったくゴングは聞こえず、レフェリーも気づかなかった。タイムキーパーに促されて両者を分けたレフェリーに満員の観客は「なんで止めるんや!!」と口々に叫んでいた。それくらいの大歓声だった。そしてなにより、ラウンド終了後のチャンピオン陣営の異変に、観客が少しづつ気づきざわめきが広がっていったシーンは会場以外では観ることができなかった。吉野弘幸選手と上山仁選手の日本タイトル長期防衛王者同士のライバル対決は、衝撃的なKOシーンよりも、おそらく吉野が勝つだろう、という客席の空気感。そして不利の予想を覆しかつて敗れていたライバルをKOした上山選手が男泣き、グジュグジュになっているのを見かねた?好漢・吉野がKOされたばかりだというのに上山選手に歩み寄り肩を抱き、頭を撫でるようにして労った瞬間こそが記憶に残る名場面だった。
そういう観点から、ポンサックレックvs内藤戦を間近で体験したからこそ!という場面を思い出してみる。
3R、ポンサックレック選手が目を切って出血。ラウンド終了後「このキズは内藤選手の有効なパンチ、ヒッティングによるものです」と場内にアナウンスされ、チャンピオンのキズから激しく血が流れるのを見た観客が「パンチによる傷…このままレフェリーストップになれば…(内藤の勝ちだ。)」という予感を抱き何とも言えない緊張感が広がった瞬間。
そして9R、ポイントの劣勢を知ったチャンピオンが強烈な攻勢をかけて内藤選手が一気に劣勢になった後、気力を振り絞って盛り返したあの場面…。客席に広がる一喜一憂や、ざわめき。あの場に身を置いてこそ味わえるものだった。
そして歓喜の瞬間…大橋秀行選手がチェ・ジョンファン選手をKOして日本の世界挑戦連続失敗記録をストップした時の後楽園ホールを思い出した。
大混乱となったリング上で佇む前王者となったポンサクレック選手。このあとに彼の凄さが現れていた。判定が発表されたあとからまったく態度を崩さない。見方によっては微妙な、接戦であったにもかかわらずだ。自然なタイミングで内藤選手を祝福に歩み寄る。その堂々とした態度は喜びに沸く内藤陣営が一瞬敬意を払ってしまうほどの威厳に満ちていた。客席も「流石」と唸らされた雰囲気となる。リングに上げられた内藤選手のお子さんに気をつかうポンサクレック選手。ゆっくり静かにと四方に丁寧に礼をしてリングを去る前王者。その姿はこれぞ17度の防衛を果たした世界チャンピオンというもので、インタヴューを求められ始まったところであった新王者が、一瞬話を止め目をやるほどであった。勝利に沸いていた客席からはこの時確かに前王者への拍手が起こった。これはこれまで日本ボクサーが挑戦してもなかなか勝てなかったはずだとしみじみ思う。別の惑星のカラオケ親子との対戦なんかが実現しなくって本当に良かったと思う。次元が違う。タイの名世界王者に退治をお願いするのはあまりに失礼であったと今更ながらに思う。
あと予想外に良かったのがリングアナウンサー。あれ今日は富樫アナじゃないのか?と思ったがこの夜のアナ氏もなかなかだった。細かいところはともかく要所をうまくおさえていたし、タイミングが絶妙。痒いところに手が届いていたのではないだろうか?素晴らしい「間」であった判定結果と勝者の発表。そしてインタヴュー後入場テーマ曲が大音量で流れて観客が大いに盛り上がっている時にリング隅で佇んでいる姿を見て「王者コールやらないのかなぁ…」と思って見ていたら…。(80年代終盤頃から?最初は関西での試合を中心として始まったもので、歓喜&祝いの場が終わろうかというタイミングでざわめく会場にリングアナが改めて「WBC!世界○○級チャンピオン!!○○△△~」と叫んで会場を最後に大きく盛り上げるというもので、ラスベガス等アメリカのリングで行われているものを真似たのであるが、僕は王座を奪った選手を称えるコールとしてベタであるが素晴らしいと思っている。なぜか関東の試合では行われることが少なかったがここ10年ほどは行われることも多い。)
曲が終わるやいなやマイクを持ち、『WBC!世界フライ今日チャンピオン!!内藤大助~!!!」と決め、最後を盛り上げた。
おお!満足。。
でも自分にとって一番心に残った場面は
歓喜の渦の中、喜びを爆発させた内藤陣営の輪の中から、僕の友人がゆっくりと抜け出して前王者陣営に歩み寄り、ポンサクレック選手に丁寧に挨拶してどちらからともなく抱き合うやいなや感極まり涙を見せた瞬間だった。近づくタイ側のスタッフ。これまでなんども交渉の現場で、顔をあわせて来たであろう名王者とそのスタッフ。試合を受けてもらえなければ勝利もなにもなかった。戦った選手だけの勝負ではなかったことが滲み出た場面。
決して自分という一個人としての顔を塗りつぶしてしまったりすることなく、この大仕事を完遂した彼に、ありがたくも直接声をかけてもらってこの場にいることが、自分の手柄でもないのに誇らしく思えた。
以上、『人の褌で3回もブログを書いてしまいましたの巻』でした~。