今朝、金曜日の朝、起きてすぐ。僕のこれまでの音楽まみれ人生に大きな、そして決定的な影響を与えてくれたドクター・ジョンの訃報を知った。
身体の具合が相当悪いことを聞いていたので遠くない将来…とある程度の心の準備をしていたはずなのに。やっぱりいろいろ、いろいろ思い出してしまって気持ちがなかなか落ち着かない。
「僕の音楽まみれ人生への影響」なんて自分以外の方にとってはなんの意味も興味も持てないものだとわかっているのですが…。
ドクター・ジョンの訃報に接し、あえて記します。
現在の好き度合い、熱狂度合いとは別に、自分のこのロクデナシ音楽生活に決定的な影響を与えた!といえばローリングストーンズとドクタージョン『GUMBO』に他ならない。
(もし3つ目をあげるなら86年に体験したクラレンス・『ゲイト』マウス・ブラウンのライブにおける間口の広い音楽性)
ストーンズの強烈な影響により高校時代からブルース&ソウルにのめり込んでいた 19歳の俺。とにかく毎日出勤するかのように新宿や下北や吉祥寺のレコ屋を、少しでも安い(聴きたいと目星をつけている)盤を求めて徘徊する日々。
そして当時の地元、経堂の街にもたくさんのレコード店があった。行くのは主に中古盤店だったけど新譜屋にも行った。農大方向へ向かう商店街から少し大きめの道を左に入ったところにあった新譜屋。ホームランレコード?(いや、それは一本手前の路地を左に入った薄暗く奥に細長い中古盤屋さんの名前だったかもしれない。新譜屋の名前はこれまでも何度か調べたけどハッキリとはせず…。誰か教えて欲しい。)
とにかくある日、その店で久しぶりにレコードを物色していた。天気良かったなー。
正方形のその店は品数も少なくスッキリとコギレイで当時のレコ屋としては反主流にさえ感じられる場所だった。
前面はガラス張りでとても明るかったのが印象的で、輸入盤も国内盤もある個人経営の新譜屋、今思えばセレクトショップだったなー。
クセがありそうに見えて気さくな店主さんがお客に話しかけ音楽話をしながら「これ聴いてみる?」とシールド以外のものは売り物を直接聴かせてくれて、やがては何か買い物が成立するという、今考えればなかなかに効率の悪い営業形態でした…。
高知の『じゃんじゃん』も『アーカシャ』もこんな感じやったな。でも各地に有ったこういう店たちが沢山の種を蒔いたのだ、と思います。
東京新人の19歳はその日もいろんな話をしながらレコードを聴かせてもらい物色していた。「ブルースは結構聴いてるんだねー」から「ニューオリンズは?」みたいな話になり店主さんが取り出したのが『GUMBO』だった。ブルースでもソウルでもジャンプでもなくニューオリンズ、と地名で尋ねられたのには不思議な感じがしたはずだ。
ドクタージョンの存在は知っていたし、84年の来日公演のマガジンの記事も覚えていた。渋いピアニストと言ったイメージ。
ドクタージョンはこのアルバムだよ。と青空が印象的なジャケットからレコードを取り出し、大っきな音でかけてくれた。
そんな各地でよくあったであろう光景。
天気が良くて明るい午後のレコード店にアイコアイコのあのピアノのビートが流れたのでした。
驚いた!一発で気持ちが持っていかれた…。
入り口の扉は開け放たれていて音が通りに躍り出ている。
ただただ呆然と聴いていると間髪いれず(と感じた)ブロウウインドブロウへ。
これは決定的なものに出会った!とすぐに理解した。
もちろん即その場で購入。もちろんその盤を購入した。興奮して受け取ったのを覚えてる。
四畳半風呂トイレなしのアパートに持ち帰って聴きまくったこのレコード。ルイジアナ、ニューオリンズの名曲の数々をドクタージョンが取り上げ味付けした『ガンボ』は何度聴いても飽きずに興奮できる強力なサイコーの音盤であると同時に、彼の地ニューオリンズの豊かな音楽世界に足を踏み入れる素晴らしき道先案内人でもあったのでした。
この音盤から受けた影響は本当に計り知れない。
ストーンズがザ・バンドが、あと一歩で開いてくれなかったルイジアナへの扉を勢いよく開け放ってくれた。ありがとうドクタージョン。
ドクタージョンの音楽にはガンボだけでなく、素晴らしいものが沢山ある。30数年の間、たっぷり楽しませて頂き、改めて感謝しています。
※なかでも2012年のLocked Downはあっと驚く大傑作!
ライブでも素晴らしい体験を何度もさせて貰った。青山CAYでのめくるめくソロピアノ。ネヴィルブラザーズと共にテレキャスターを抱えてのインクスティック。九段会館も素晴らしかった。実はまったくの初めてだったゲイトマウスとの野音での共演。ニューオリンズでもライブを体験できたし。良い思い出でいっぱいです。
何度でも言うよ。
ありがとうドクタージョン、マック・レベナック。
今夜はバイユーで
貴方のレコードを沢山、聴くことにします。
本人の覚え書き的な長文、読み進めても実りもオチもなく大変失礼いたしました。