バイユー ゲイト 不定期日刊『南風』

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荒川仁人選手日本チャンピオンに!後楽園ホールはやっぱり凄いところです。

2010-04-26 | ボクシング

100422_2 先週、久しぶりに後楽園ホールに行ってまいりました。後楽園ホールといえばボクシングです。ご存じない方もいらっしゃるかと思いますが後楽園ホールはボクシングの為の会場なのです。その上でプロレスリングや笑点のメッカ「でも」あるのです。

観戦に行ったのは八王子中屋ジム所属の荒川仁人選手が日本ライト級王座に挑むタイトルマッチ。そうです、バイユー近辺で知ってる人は知ってる~荒川選手の所属する八王子中屋ジムの中屋廣隆会長は僕の高校の大先輩なのです。縁あってボクシング好きの後輩は日頃から可愛がっていただいております(『高知しばてん魂レヴュー』の協賛社には八王子中屋ジムの名前が!!)。
数々の著名選手を輩出し、名指導者として名高い中屋会長。そうなのです、私の先輩はブルース歌手のRさんのようなヒトばかりじゃあないのです。念のため。ドリモグダァズの面々やザディコキックスのNシダ先輩、英くんと有沢くんのAサワくんだけではないのです!

そんな中屋ジム、現在の看板選手のタイトル挑戦。お誘いを受け、喜んで応援に駆けつけたというわけです。

100422 久しぶりのホールは若干のリニューアル部分が目につきます。通路には歴代世界チャンピオンの金色に輝くネームプレートが新設されています。そしてなんとあの煙モクモクのホールのロビーに喫煙ルームが!!これが時代の流れというのでしょうか??もちろん良いことなのでしょうがなんとなく複雑な気分です。中に興味があったのですが…そこはすでに足を洗った人間が入り込んで良い場所ではないような気がしました。マイノリティ扱いを受ける喫煙者の方の姿は元喫煙者として他人事ではないのです。

この日の興行は判定決着がほとんどだったのでメインイヴェントの開始は9時を過ぎていました。長丁場で若干焦れ気味だったホールは両選手の登場とともに熱気に包まれました。

チャンピオン近藤明広選手の応援団はかなりの熱さ!しかし荒川選手の応援も負けてはいません。歓声でホールがいっぱいになります。近藤選手は1RKOで王座を奪って防衛戦でも強打を見せつけたファイター、そして荒川選手は高い技術に強打を併せ持つ実力者。専門誌の予想でも5分5分と書かれており、実力伯仲の好カードとされていました。しかし僕は荒川選手が有利、いやかなり優勢なのでは?と思っていました。それは昨年の5月に八王子での試合を間近で観戦しての感想です。接近しても発揮される細かく高度な技術にカウンターを取るセンス。そして強打。これはなかなかの好選手だ!と思っていました。というわけでかなり気楽に勝利を期待して座っていたのです…が!!第1ラウンドいきなり近藤選手の右ストレートのワンツーで荒川選手が足を跳ね上げて派手にダウン!タイミング的に足の揃ってしまったところに受けたようにも見えましたが場内は騒然。タイトルマッチで1R決着の経験のある近藤選手が襲いかかります。私、甘い予想が大きく外れて一緒に行ったT先輩と「あああダメージは???」と小声で狼狽。猛攻に晒される荒川選手。しかし、膝の様子から見てダメージはそれほど深くないようで一安心。とはいえ一気に持っていかれたペースを奪い返せるか?と思って身を乗り出していると。襲いかかってくる近藤選手の入り鼻にサウスポーの荒川選手の左アッパーのタイミングが今にも合いそう。当たりそう。攻め込まれているのに意外に距離やタイミングのアドヴァンテージは奪われていません。「これは十分いけそうですね」「そんな感じだね」と会話を交わして試合に集中。その後は観戦慣れだけはした素人の感触通り、少しづつ的確さで荒川選手が上回り始めポイントを奪い返していきました。左アッパーも当たり始め、近藤選手は強引に入れなくなってしまった。それにしても、接近しても揉み合ってもそして離れても雑にならずに繊細なボクシングをする荒川選手はやはり良い選手です。そのうえ強打もあるとなればなおさらです。スタイル的に僕は技術(に伴う強打)とハートを備えた攻防一体型の選手を好む傾向があるので荒川選手のボクシングは非常に好ましい。

例をあげると近年の世界王者だと長谷川穂積選手や徳山昌守選手、川島郭志選手。加えてワイルドさがあれば尚いいですね。アズマー・ネルソン。そして極めつけはマーヴィン・ハグラー!でしょう。もちろん敬愛熱愛する選手となればまた別で、変則ファイターの選手や泥臭い技術を持った選手に思い入れたりして観戦してきたのですがスタイル的にはこんな感じですね。

試合に戻ると1Rのダウンから回復した荒川選手が試合の主導権を奪い返したのですが、近藤選手も驚異的な粘りを見せ応戦。完全にリードするというところまではいけません。しかしクリーンヒット数で上回り優勢が明らかになってきた6R、右フックをヒットするとチャンピオンがよろめきグローブをキャンバスにつきました。明らかなダウン!だったのですが死角だったためか?レフェリーはダウンをとらずに続行。とはいえ荒川選手優勢はますます明白なものになりました。ところが!劣勢の7Rからチャンピオン近藤選手は意地を見せて強引に打ってでました。出鼻を打ち据えられてもひるまずのラッシュ。応援団は絶叫しています。負けじと荒川選手側も大声援。隣のTさんとの会話は困難になりました。押し込まれそうになっても打ち負けたりはしない荒川選手ですがチャンピオンの気迫で混戦模様に。熱戦は時間の過ぎるのが早い。あっという間に最終10R。最後はゴングまで激しいパンチの応酬が続き、歓声でまさにホールが揺れていました。もうT先輩と会話しようにも自分の声も聞こえません。初めてボクシング観戦に来て、こんな雰囲気を体験したらきっと衝撃で知恵熱が出ることでしょう。それくらいに知らない人にとっては異次元の世界。実際、頻繁にホールに足を運んでいた20年近く前には(一時期ですが)音楽のライヴ、というものになんとなく興奮や感激を味わえなくなって困ったという経験があります。凄く興奮している会場で、ついついホールで味わった全身の血が沸騰するような(美しさを伴っているため興奮とは微かに違う)と比べてしまい冷めてしまっていたのです。比べる自体がおかしかったのですが、それくらいに特別なものなのです。暴力の疑似体験をして興奮するのとはまったく種類が違うし、思い入れて応援して感傷や興奮へというのとも少し違うのです。

激しく打ち合ったまま試合終了。大歓声の後、静まりかえるホール。判定が読み上げられ2対0の判定で荒川選手が勝利!逆転で日本タイトルを奪取したのでした。応援団とファンの歓声で再び大騒ぎとなる後楽園ホール。しかし数分前と違うところは、うなだれて声を失った一角の存在です。


2対0ということで1人が引き分けと採点していたのですが、これはちょっと疑問で、実際は明白な荒川選手の勝利だったと思います。ただ近藤選手の気迫溢れる粘りで好試合になったのも事実です。それゆえの接近した採点かと思います。パンチもハートも強いチャンピオンに勝って王座に就いたことは荒川選手の今後にとって大きなプラスとなることでしょう。Photo
アラカワ・ニヒト選手、これから更なる飛躍が期待されます。長文をお読み頂いた皆さま、是非覚えておきましょう!

数日後中屋会長がバイユーに寄って下さいました。お忙しい中ありがたいことです。またできれば、応援に行きたいと思っています。興味を持たれた方は是非一度ご一緒しましょう!

荒川選手、八王子中屋ジムの皆さまおめでとうございました。