バイユー ゲイト 不定期日刊『南風』

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謎のまま去って行ったエドウィン・バレロ

2010-04-21 | ボクシング

新聞等でも報道されているようにプロボクシング2階級制覇チャンピオンでベネズエラ出身のエドウィン・バレロ選手がこの世を去った。一時日本のジムに所属し、2度の防衛戦を日本人挑戦者とも戦ったバレロは馴染み深い選手だっただけに衝撃は大きい。

その衝撃の大きさは
彼が奥さんを殺した後、留置所で自ら命を絶ったという事実ゆえになんともいいようがないほどだ。
27戦27勝27KO。パーフェクトレコードを残してリングからもこの世からも去っていったバレロ。日本のテレビで何度も家族での幸せそうな映像を目にしていただけに、今回の一件にコメントのしようもない。彼らの間に何があったのか?すべては謎のままだ。

Photo ではボクサーバレロについては?
全勝全KOの彼のボクシングは荒々しくスピード豊かなものだったが、脇が甘く打ちかかる時にはアゴがあがってしまう喧嘩のようなフォーム。ガードや細かい技術という点でも「世界最高峰」というレベルではないように思えた。なのに全ての対戦者は敗れ去った。
彼のリングでの姿は凶暴そのものだった。特に倒しにかかったときの荒れ狂うようなラッシュ、その時の目には狂気の色が濃く、ハッキリいって見ていて気持ちの良いものではなかった。
暴力的でありながら美しいボクシングは子どもにも見せられる格闘技だと思っているが、バレロのボクシングは子どもには見せたくないと思わされるものだった。
リング上の凶暴性というとマイク・タイソンを思い出す人も多いかと思うが、タイソンはボクシングとして昇華した中から時折覗く凶暴性であったし、はっきりとボクシングであったといえる。しかしバレロの凶暴性はあまりに危うかった。試合後、対戦相手や家族に見せる笑顔を見ているとあの狂気は錯覚だったのかと思えるが、残念ながらリング外でも時おり狂気の片鱗を覗かせることがことがあった。「これはボクシングとしてはギリギリだ。」これが僕のバレロ評でした。

それではどれくらい強かったのか?という疑問については…なかなか難しい。
マネジメントの問題等もあって、バレロはいわゆるビッグネームとの対戦は実現していないのだ。現在のプロボクシング界最大のスター、マニー・パッキャオ選手と階級も近かったため対戦が期待されたが、それ以前のレベルの強豪選手との戦いも実現しなかった。もちろん世界王座2階級制覇を達成しているし、日本のトップ選手(本望選手、嶋田選手)を倒しているし世界チャンピオンとしての力があったのは確かだ。しかし本望選手、嶋田選手という世界レベルの選手には善戦を許している(ドクターストップ等であって完璧に倒したわけではない)ことからも、世界最高レベルの選手(他階級のチャンピオン等)と戦ったときにあの完成度の低そうなボクシングが通用するのか疑問視されていた。メイウェザーにパンチが当たるのか。あのあがったアゴはパッキャオのカウンターに耐えられるのか?全ては謎となってしまった。全勝全KOという生涯成績ながら世界中のボクシングファンは「バレロとは一体何だったのか?」という疑問を抱き続けることになってしまった。
暴力的に過ぎて「これが素晴らしいボクシングというものだよ」と人に勧め辛いファイトスタイルに、スキャンダラスでショッキングな結末。残念でならない。本当に最悪のストーリー。

残された子どもたちが生き抜いていけることを祈ります。