南無煩悩大菩薩

今日是好日也

彼らの掟

2020-07-11 | 古今北東西南の切抜
(picture/source)

彼らは、人間が地球に登場するはるか昔から生態系の中で生物多様性の一員として進化を繰り返しており、それぞれ決まった生物とともに共生関係を築いてきた。

そしてある種の生物集団が増えすぎて(密になり)生態系のバランスを崩すようなことが起これば、その集団に寄生して感染症をおこし、集団密度を低下させて数の調整を図るとともに、より病気に強い集団へと進化させる。すなわち内なる天敵としての機能を果たしてきた。足の遅いシマウマから食べて、シマウマ集団の数を調整するとともに、より足の速い強靭なシマウマへと進化させているライオンと同じ役割を担っている。

生態系と言うシステムでは、太陽エネルギーによって植物が二酸化炭素と無機塩(窒素やリン)を材料として光合成をおこない、酸素と有機物をつくりだし、それを一次消費者である草食動物が利用して繁殖し、それをその上の肉食動物が利用する、と言う具合に生物の階層性が構築されている。すべての動物は死ねば屍と化して、細菌や菌類によって無機物へと分解され、再び植物の光合成の原材料として活用される。

このシステムには、物理的制約による重要な構造が存在する。まず、各階層で消費できる物質の量は、生態系の上位に行くほど少なくなる。なぜなら、生物は、食べたものから得たエネルギーを活動に使うので、その生物に蓄えられる栄養量は、食べた量より減るからである。だから、生態系の上に立つものほど、必然的に個体数が小さくなるという、生態系ピラミッド構造がつくられる。

人間が、自力で火をおこし、道具をつくっている時代は、バランスが取れていた。生態系の掟から大きく離脱し始めたのは、産業革命以降、化石燃料の利用を開始した時からであった。飛躍的な破壊能力、移動能力を手に入れたことで、すべての生物の上に君臨する、生物史上最強の消費者と化した。人間はあらゆる生物から資源を搾取し、寄生生物からの攻撃を抗生物質で封じ込め、高い生存率と長い寿命を獲得し、ひたすら増え続けた。この人口を支えるために、乱獲や農業面積の拡大を加速させている。

エネルギーと資源の大量消費は、結果的に生物の生息環境を悪化させ彼を呼び寄せ、生物多様性の減少を招くと同時に、地球の環境負荷を急激に変更かつ進行させている。

生態系のバランスを崩すほどまでに増えた生物は、一方で、餌としてみたら、極めて有効な資源となる。すなわち、天敵が登場すれば、増えすぎた生物種は格好の標的となり、捕食され続けて、数を減らすことになる。その天敵として、より強い捕食性動物が登場することもあれば、寄生性微生物の出番となることもある。

ここまで増加し密集している人間はまさに、彼らにとって絶好の獲物といえよう。生態系の奥深くからスピルオーバーした彼らは、みずからの増殖のための工場として、大量に存在する人間の体内に入り込んで、そのエネルギーを最大限利用しようとするのは、彼らの掟に他ならない。

(切抜参照/五箇公一「人類の進歩が招いた人類の危機」 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2020 年8月号より)

『風のメルヘン』

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